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CV:大谷凜香 レミリア・ドル・スカーレット 階級は、少将。アサシンの妻でアサシンの同期。14歳ぐらいの時から結婚している。正体不明の女性軍人 初登場作品ステルスアサシンウオーグⅡ トワイライト州アルテミニス市バテン町 生涯 フランの姉でアサシン・零の妻であり理解者でもあり、 彼との出会いは、アルカジアとの内戦の時、敵に背を見せて敵が引き金を引いた瞬間、アサシン・零が庇い、アサシン・零が瀕死の重傷を負った。それ以来帝国特有の黒服軍服を身につけ強い女性でありたいと語っている。 アメリカやロシアにも女性軍人制度が無い為、こうゆうのは、珍しい。 自分の護衛に日本人をやっとている。 家柄 その正体は、スカーレット家。元々、ドラキュラ家の分家でアルテミニス・シュッペツという人物が先祖である事が作中にて判明。ただし東方Projectのレミリアとは、ほぼ別人。「同じ人つまり同一人物にも見えるが」まったくの別人で性格は、冷静沈着とクールを合わせた女性軍人で策士みたいに見える。更に無言が多く。アサシン・零やフランと話す時だけ喋れたり東方Projectレミリア、フラン姉妹の両親は、冷戦時代にグリデンバラの粛清に関わった生物科学者バルザイラ・ドル・スカーレットと母親のレイマリア・ドル・スカーレットである。彼女もGOD EATER時代でもアサシンとともに生きているという噂がある。ドストリンクな時代だった。 戦闘能力 攻撃力は、低いが守備力(防御力)と速さに優れている。基本的な武器は、近接が槍であり、遠距離の銃がスナイパーライフルである。その為、アサシン・零は、漆黒の狙撃手(スナイパー)と呼ばれていたがレミリアは、死相夢像(死を知らせる夢のような人物)の狙撃手と呼ばれている。アサシンクリードみたいにそのまま戦闘だとNPC判定なので死にかねないので時々、援護しよう。リザレクションでは、PCに変えれるので便利となった。リザレクションでの性能は、フランよりそこまで強くない。守備しか高いので攻撃力が低いレミリアは、他のNPCなどが体力低い時に立ち回ろう。また帝国格闘術でも強い。
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レミリア 転職条件 咲夜+レミリア人形 レミリア 成長率 33_f.gif HP MP 攻 守 素 魔 精 S S SS E A S E 備考 ものすごく打たれ弱い夜のカリスマ。しかし下段ガードを固めたおぜうに隙は無かった 習得スキル 名前 習得SP 威力 消費MP 属性 備考 スターオブダビデ 5 低 10 魔法・全体攻撃 (※)ブラド・ツェペシュの呪い 20 - 30 - 攻撃力2倍+自身に毒付加 (※)トリックスターデビル 20 中 10 物理・単体攻撃 ハートブレイク 30 中 10 物理・単体攻撃 レッドマジック 45 中 20 魔法・2~4回攻撃 スピア・ザ・グングニル 60 高 35 物理・単体大ダメージ 吸血鬼幻想 80 中 20 物理・全体攻撃+吸血付加 紅色の幻想郷 100 高 50 魔法・2~4回攻撃(敵一体時)攻撃対象の数だけ攻撃回数が増える れみりあうー☆ 1000 - 10 - 大防御付加+敵全体魅了 ※『ブラド・ツェペシュの呪い』は1クエ一回のみ使用可能。使用後は同じ位置に『トリックスターデビル』が出現。 永遠に幼い紅き月。レミリアを使用する際に気をつけなくてはいけないのが、スペルが攻撃と魔力、どちらに依存しているのかということ。どちらも成長率はいいのでそこそこの威力を期待できるが、あくまでそこそこである。どちらかに特化した運用ができないとカリスマがうー☆してしまう。それでも従来の5ボスまでとは比較にならない強さに変わりはないが バランス調整の為、SP1000技は消滅しました コメント 吸血鬼幻想は吸血付与 -- ワシズ (2012-04-15 11 38 32) 紅色の幻想郷は吸血付与でした~ -- た~みあ (2012-04-27 18 54 31) 名前 コメント
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レミリア・スカーレット 各キャラとの対戦に於いて
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レミリア No.024 タイプ:あんこく/ひこう 特性:プレッシャー(相手の技のPPの減りが1増える) するどいめ(命中率が下がらない) HP 攻撃 防御 特攻 特防 素早 75 110 75 110 75 105 ばつぐん(4倍) はがね ばつぐん(2倍) かぜ/こおり/しんとう/こころ いまひとつ(1/2) あんこく/しぜん/げんそう いまひとつ(1/4) ゆめ/けもの こうかなし おばけ/だいち コスト:150(コスト技の威力:100) 覚える技 レベルアップ ちびレミィ レミリア 1 きゅうけつ 5 にらみつける 10 かみつく 15 だましうち 20 ちょうはつ 25 つばさでうつ 30 いあつ 35 ハートブレイク 1 でんこうせっか 1 かみなりパンチ 1 ほのおのパンチ 1 ばかぢから 1 エアスラッシュ 1 おいかぜ 1 ブレイブバード 1 げきりん 39 あやしいかぜ 42 ちょうはつ 45 こわいかお 48 あばれる 52 エアスラッシュ 56 おいかぜ 60 ブレイブバード 64 げきりん 卵 フェザーダンス バインドボイス ほのおのうず いちゃもん わるだくみ 技マシン 02 ちび ハートブレイク 05 ちび ほえる 07 ちび かまいたち 10 ちび どくづき 12 ちび ちょうはつ 17 ちび みきり 19 ちび ギガドレイン 27 ちび おんがえし 30 ちび シャドーボール 31 ちび かわらわり 32 ちび かげぶんしん 37 ちび サイコカッター 40 ちび いばる 43 ちび ひみつのちから 44 ちび ねむる 45 ちび メロメロ 46 ちび どろぼう 47 ちび はがねのつばさ 49 ちび よこどり 秘01 ちび いあいぎり 秘02 ちび そらをとぶ 秘04 ちび かいりき 秘06 ちび いわくだき
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レミリア・スカーレット 加入場所 紅の城でレミリアに協力するか黒の城でフランに協力した後レミリアと戦って勝てば合流 ステータス倍率 HP★★★☆ MP★★★★☆ 攻撃★★★★☆ 防御★★★★ 魔攻★★★★☆ 魔防★★★☆ 命中★★★ 回避★★★★☆ スキル詳細 スキル名 前提スキル 種別 対象 消費MP 詠唱時間 効果 射程・範囲 ハートブレイク ― アクティブ キャラ 0 通常より威力の高い物理ダメージ。 射程:隣接1 スピア・ザ・グングニル ハートブレイク5 アクティブ キャラ 0 赤い槍を投げつける。遠距離に物理ダメージ 射程:◇1~5 ヴァンパイアクロウ スピア・ザ・グングニル5挑発10 アクティブ キャラ 0 相手に突進しながら攻撃する。対象の目の前まで瞬時に移動しながら攻撃。 射程:◇1~5 全世界ナイトメア ハートブレイク10 アクティブ 床 範囲内に闇属性の物理ダメージ。 範囲:特殊前面、斜め後ろの範囲 スターオブダビデ 全世界ナイトメア1ドラキュラクレイドル5 アクティブ 床 範囲内に攻撃力と魔法攻撃の両方を使った闇属性のダメージ。 範囲:特殊自分の周囲 スカーレットデビル 全世界ナイトメア5ヴァンパイアクロウ5 アクティブ 床 十字型に紅色のオーラを飛ばす。範囲内に攻撃力と魔法攻撃の両方を使った闇属性のダメージ。 範囲:特殊三マス幅の十字 レッドマジック スカーレットデビル1紅魔の誇り3スターオブダビデ5 アクティブ 床 紅い魔法で全体を紅く染め上げる。敵全体に攻撃力と魔法攻撃の両方を使った闇属性の超ダメージ。 範囲:MAP全域 威嚇 ― アクティブ キャラ 0 対象を威嚇する。単体の攻撃を減少させる。スキルレベルに応じて減少量増加。 射程:◇1~7 挑発 ― アクティブ キャラ 0 対象を挑発する。単体の防御を減少させる。スキルレベルに応じて減少量増加。 射程:◇1~7 テラースクリーム 威嚇10 アクティブ 床 0 恐ろしい声で叫ぶ。自分周辺の敵が驚いて一時的に動けなくなる。スキルレベルに応じて確率増加。 範囲:◇1~5 アンチシャイン ― パッシブ ― ― ― 暗闇の中でこそ吸血鬼の真価が発揮される。自分が暗闇状態の時に攻撃と魔法攻撃が増加。 ― ドラキュラクレイドル ― パッシブ ― ― ― 吸血鬼の夜の揺り籠。攻撃時に稀に相手を睡眠状態にする。スキルレベルに応じて確率増加。 ― ヴァンパイアキス ― アクティブ キャラ 吸血鬼のキス。対象にダメージを与えつつ自分のHPを回復する。 射程:隣接1 血液循環 ヴァンパイアキス3 アクティブ 使用者 血液を巡らせ自らの生命力を変換する。自分のHPを減らしてMPを回復する。スキルレベルに応じて回復量増加。 自分自身 紅魔の権威 挑発5威嚇5 パッシブ ― ― ― 紅魔の権威を見せ付ける事により見惚れさせる。稀に敵の攻撃を回避。この判定は通常の命中判定より前に行われる。スキルレベルに応じて回避増加。 ― 紅魔の誇り 紅魔の権威3 パッシブ ― ― ― 紅魔の誇りで最後まで戦い抜く。瀕死状態の時に魔法防御増加。スキルレベルに応じて増加量増加。 ― カリスマ ― パッシブ ― ― ― 身から溢れるカリスマで周囲の仲間を力づける。自分の周辺の仲間の全ステータス増加。スキルレベルに応じて増加量増加。 ― 特徴 うー☆ 「私がいないとダメなようね」 紅魔館の主。カリスマ溢れる吸血鬼でフランドールの姉。別に日傘が無くても外で戦えるようだ。 回避力が最も伸び、続いて攻撃・魔攻・MPも伸びる。一方で魔防と命中は伸びにくく、特に体力の低さが目立つ。 当たらなければどうという事は無いが、当たれば即ピチューンの危険性が孕む。高い回避率で敵の攻撃を避けつつ、高機動・高火力を以って 敵を殲滅する戦法がベターか。しかしレミリアには無詠唱の遠距離攻撃、「スピア・ザ・グングニル」があるので敵前に身を晒さなくても戦える。 スキルの方は汎用性に富む構成となっている。目の前の敵にはハートブレイクで大ダメージ、遠方の敵にはスピア・ザ・グングニルで安全に攻撃、 敵に接近したい時はヴァンパイアクロウ、まとめて薙ぎ払いたい時は詠唱の早いスカーレットデビル、といった具合に使い分ける事が可能。 フランドールが魔法タイプなのに対しレミリアは物理タイプと言える。 カリスマ溢れる吸血鬼なので、やはりカリスマ持ち。 うー☆ 名前 コメント
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レミリア・スカーレット 移動方法 ボーナス レベル HP 攻撃力 防御力 移動速度 射程 攻撃間隔 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 スペル1 必殺「ハートブレイク」 アイコン タイプ Active 指定地点に向けて槍を投げ、直線上の敵ユニットにダメージを与える。 レベル クールダウン 射程 範囲 効果時間 対象 効果 1 - - 敵 50ダメージ 2 - - 敵 70ダメージ 3 - - 敵 90ダメージ スペル2 サーヴァントフライヤー アイコン タイプ Active 指定地点に向け、視界を持ち敵を探す蝙蝠弾を発射する。 レベル クールダウン 射程 範囲 効果時間 対象 効果 1 - - 敵 攻撃力10、1匹 2 - - 敵 攻撃力10、3匹 3 - - 敵 攻撃力10、5匹 スペル3 魔符「全世界ナイトメア」 アイコン タイプ Toggle トグルONの間、自分と周囲の敵ユニットのHPが減少し続ける。トグルをONにするのにHPを200消費する。 レベル クールダウン 射程 範囲 効果時間 対象 効果 1 - - 自身、敵 1秒毎に敵に4、自分に与えたダメージの60%ダメージ 2 - - 自身、敵 1秒毎に敵に6、自分に与えたダメージの40%ダメージ 3 - - 自身、敵 1秒毎に敵に8、自分に与えたダメージの20%ダメージ ラストスペル 紅魔「スカーレットデビル」 アイコン タイプ Active 範囲内の敵に継続してダメージを与える。 レベル クールダウン 射程 範囲 効果時間 対象 効果 1 ? ? ? 8秒 敵 0.5秒毎に75ダメージ、8秒間 スキル紹介 必殺「ハートブレイク」 サーヴァントフライヤー 魔符「全世界ナイトメア」 紅魔「スカーレットデビル」 待たせたな -- レミリア (2013-01-02 15 43 03) 待たせたな -- 名無しさん (2013-01-02 17 21 07) 名前 コメント
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レミリア6 うpろだ537 僕はあの日、あのお方に出会った。 時に優しく、時に怖い僕の最愛の人。 始めて会った時から僕はあの人にただ惹かれていた。 向こうではなんでも出来てしまった僕。 僕を変えたものの全てに……僕は感謝してます。 「○○、そっちはもう良いわ。こっちをお願い」 「はい。メイド長、じゃなくて……咲夜さん」 僕は今日もまた咲夜さんの手伝いをしていた。 この幻想郷に迷い込んできてはや1週間……なのかな? とりあえず色々あってここ、悪魔の住む屋敷、紅魔館に住み込むようになってからは1週間か。 最初は少し大変だったけど、いつものようにすぐに慣れた。 一通り屋敷のことは覚えたし、もうお茶も満足いくレベルのが淹れられる。 一応従者では合格点を貰えるくらいの実力なんだ。 咲夜さんには全く勝てないけど。 「今日は他にやることはありますか?」 「……いや今はないわね。でもそろそろお嬢様が起きてくるから、少し休んでて」 「そうですか……では少し失礼します」 咲夜さんとは一応同僚兼上司の関係。 とは言っても咲夜さんはメイド長で、僕は一介の従者。 本来物凄い立場の差があるはずなのに、僕は特別扱いを受けている。 それは全て……僕がレミリアお嬢様付きの従者だからなんだよね……。 「○○、今日も外には出ていないわよね?」 「はい。レミリアお嬢様の言う通り、今日も一歩も出てません」 僕は何故か森で発見され、ここ紅魔館に連れてきてもらってから、レミリアお嬢様の命令で一度も外に出てない。 レミリアお嬢様の命令なら逆らう理由はなんだけど……一応疑問には思ってるんだけど、聞けないし。 他にも屋敷が騒がしい時には図書館やパチュリー様に近づくなとか……良くわからない命令が多い。 だから僕はこの幻想郷の森と、紅魔館しか見たことない。 でもまぁ問題ないかな? 僕はただレミリアお嬢様のお側に居られればそれで……。 「レミリアお嬢様はお出掛け……少し暇だなぁ……」 実際レミリアお嬢様がいないと僕の仕事はないに等しい。 基本的な仕事をあんまりやると咲夜さんに怒られるし、図書館には轟音が鳴っていて近づけない。 だから今日は一日部屋でのんびり……してて良いのかなぁ。 「レミリアお嬢様……」 気付くと呟いてる我が最愛の人の名前。 あの日、幻想郷に迷い込んだ僕を救ってくれたレミリアお嬢様。 始めは確かに食料として確保してたみたいだけど……僕のあの言葉から突然変わった。 正直な所……僕がもう少し普通の感性を持っていたら……今ここにはいなかったんだろうな。 でも……僕はレミリアお嬢様との出会いを最高だと思ってる。 「人間。貴方は私に食われるの。覚悟は良い?」 そう言って木の幹に体を預けていた僕の前に一人の少女が立った。 対する僕と言えばきっとまねけな表情をしていたに違いない。 だって……始めて見たから……思わず声に出てた。 「……可愛い」 はっきり言って○○との出会いは最悪だった。 このレミリア・スカーレットに向かってあいつが放った第一声。 未だに耳に残って離れない。 この私に向かって、ただの人間に過ぎない○○が……あろうことか自分を食おうとしてる私を可愛い!? 正直、怒りを簡単に通り越して呆れがあった。 そして最後に出たのは興味。 私を全く恐れないこの人間……傍に置いたらどうなるか……興味があった。 だから館に軟禁状態にして咲夜に世話をさせてる。 どうやら○○は私のために働きたいらしく、従者にしてやったら妙に喜んでた。 ……別に喜ばしたかったわけじゃないけど……まぁ喜んでるならそれで良かった。 でも流石にそろそろ限界か……パチェや咲夜、小悪魔や美鈴だけに○○の存在はわかってる。 そう○○は外の人間。 霊夢やあのスキマにばれれば外に帰る話が出る。 もう○○は私の物。 誰にも渡すわけにはいかないのだ……。 「収穫はなし……か」 霊夢の所にわざわざ偵察に来てみたが、霊夢は相変わらず。 特にバレてるようでもないし、感づいてる様子もなし。 こういう偵察は咲夜に任せようかと思ってたけど……何故か自分で来てた。 どうも最近の私は変だ。 ○○のことになると、自分で確認しないと安心できない。 しかもこうやって早く帰って○○の顔を見ないと安心出来ない。 どうしたと言うのだろうか……この私が……。 だがこの時私はぬかっていた。 この運命を操る私なら気付くはずだったことを……私は気付いてなかったのだ。 「……困ったなぁ」 僕は心底困ってた。 僕はレミリアお嬢様から館から出ないよう命令を受けている。 でも……あの三人の見慣れない妖精の仕業で僕は今知らない森の中にいた。 紅魔館から出たことのない僕は正直な所外に出てしまえば右も左もわからない。 しかもただの人間である僕が飛べるはずもなく……完全に迷子になっていた。 「レミリアお嬢様に叱られるだろうな……命令も破っちゃったし」 僕は普通の人間だし、夜もだいぶ近づいてきた。 このままじゃ僕は妖怪に食われてしまうだろう。 でも……帰り道はわからない。 仕方なく僕は当ても無く歩くしかなかった。 「○○がいない!?」 「は、はいっ。見ても部屋に姿がなくて……今メイド達に探させています」 帰った私を待っていたのは、咲夜の○○不在の報告だった。 ○○が逃げ出すとは思えない。 だが実際○○の姿はない……私の落ち度だ。 「くっ!!」 「お嬢様!?」 私は咲夜の静止の声も聞かず再び外に飛び出した。 もう夜になる……ただの人間である○○は妖怪の餌でしかない。 そんなことはさせない。 ○○は私の物だ!私以外の奴に好き勝手にされてたまるもんか! 「はぁ……はぁ」 迷いに迷った僕は予想通り妖怪に追われていた。 しかも一匹どころじゃない。 走れば走るほどその数は増えていき、今はもうどんな数になってるか予想もつかない。 でも捕まるわけにはいかない……命が惜しいんじゃない。 でも僕の命を誰かに渡すわけにはいかないんだ! 「っ!!」 そんな僕に追い討ちをかけるかのように飛んでくる妖怪の弾幕。 だがあんなのはもう慣れた。 体が追いつくかはわからないけど、そんなの当たるはずがない! 「!!」 こんな人間に避けられているのが腹が立つのか、弾幕は更に激しさを増し、僕を打ち倒そうとしてくる。 でも弾幕をいくら厚くしてもパターンは一緒。 だから慣れている僕に当たるはずはなかった。 普通は当たらないはずだったのだ。 「が!?う……」 だが現実は違った。 僕の体の疲労は思ったより激しかったらしく、思ったような動きが出来なかった。 僕は弾幕を数発受け、地面に転がった。 あぁ……レミリアお嬢様から貰った執事服……汚しちゃったな……。 でも……執事服が汚れても逃げるのを止めるわけにはいかない……。 僕の命なんか惜しくない。 でも……この命はもはや僕一人の命ではない。 いやもう僕の命じゃないんだ。 僕の命はあの時救って頂いた、最愛の人……レミリアお嬢様の物なんだ! 「う……わぁぁぁぁぁ!!!」 僕は自分を奮い立たせるために叫び、また走り出した。 体なんかもうとっくに限界を超えてる。 妖怪の放った弾幕によって痛めた足や背中が酷く痛む。 それでも走らなきゃ……僕はレミリアお嬢様の所に帰らなきゃならないんだ……。 「う……うぐぅ……」 何度目か分からない転倒。 妖怪達は狩でも楽しむかのように僕が逃げるのを見ている。 でも好都合だ。 すぐに殺されないなら走れる。逃げれる。 でももう……僕の手足は言うことを聞いてくれなかった。 足が片方変な方向に曲がってる。 今かその前に転んだ時にやられたんだろう。もう感覚がなかった。 それに気付いた妖怪達はつまらなそうに僕に近寄ってくる。 あぁ……申し訳ありませんレミリアお嬢様……貴女に頂いたこの命……こんな妖怪達に散らされてしまって……。 「○○!!」 あぁ……レミリアお嬢様のお声だ……。 大丈夫ですよ……そんな泣きそうな声をしなくても。 僕は貴女様の物……どこにも……行ったりは……。 「……え?」 気付いた時には僕は知らない場所にいた。 白いベットに横たわる僕……そうか、ここは僕の世界の病院に似てるんだ。 紅魔館にこんな所あったかな? 「気付いたみたいね」 「貴女は……」 「私は八意永琳。驚いたわよ。血相を変えたこの子が、貴方を背負って永遠亭に飛び込んできた時は何かと思ったわ」 「この子……?あ、あれ?レミリア……お嬢様」 近くの椅子に座った不思議な女の人、永琳さんの言葉でベットの重みに気付くと、上半身を起こしてみて見ていた。 そしてそこにはレミリアお嬢様が寝ていた。 服は乱れ、酷く疲れていたように寝ている……なんでここにお嬢様が。 「そういえば……僕は妖怪に襲われて……まさかレミリアお嬢様が助けて」 「見た所そうね。大事にされてるみたいで良かったじゃない」 「それは……嬉しいですけど」 永琳さんはからかうような目線で僕を見てくる。 でもどうやらまたレミリアお嬢様に命を救ってもらったみたいだ。 この……なんとも可愛らしい、僕の最愛の人に。 「ん……○○?」 「あら、起こしちゃったみたいね。私は少し出てるからごゆっくり」 「レミリアお嬢様……」 永琳さんは出て行ってしまい、僕はレミリアお嬢様と二人きりで残される。 レミリアお嬢様はまだ起ききってないらしく、まだ目が空ろだ。 「レミリアお嬢様……申し訳ありません。命令を……破ってしまって」 僕はもう一度名前を呼んで謝る。 だがあまりレミリアお嬢様から反応は返ってこない。 「僕の最愛の方レミリアお嬢様、僕はどんな罰でも受けましょう……僕は!?」 そこまで言った所で不意にレミリアお嬢様が僕に抱きついてきた。 僕は何も言えずに固まってしまう。 「……○○……なんで勝手なことした……」 レミリアお嬢様の強がるような、似合わない口調。 泣きそうなのを堪えているのが、僕にはわかってしまった。 「申し訳……ありません」 「許さ……ない。でも……生きてて良かった」 レミリアお嬢様はそう言うと、体を震わせてそのまま何も言わなくなった。 泣いて……いるのだろう。 レミリアお嬢様は優しい、だから……僕のために泣いてくれているのだ。 そう思うと、僕は自然に言ってしまった。 「大好きです……レミリアお嬢様」 結果だけ言えば僕の無謀なプロポーズは簡単に断られた。 従者の身である僕がレミリア様の夫になるのはダメなのだ。 でも僕は今でもレミリア様の隣にいる。 いやむしろ……あれからと言うもの僕の外出禁止の命は解かれ、逆にレミリア様が外に出る時に必ず付き添うようになっていた。 そして必ず毎日レミリア様はこう言うのだ。 「良い?必ず私に相応しい男になりなさい。これが……貴方に与える永遠の命令よ」 はい……レミリアお嬢様。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ544 「貴方、自分に能力があるの理解してる?」 「え……?」 それはいつものように神社の宴会にレミリア様の付き添いで来てた時だった。 前に元の世界に帰る話しをした(勿論断った)、えっと……たしか八雲紫さんが不意にそんなことを言ってきた。 えっと能力ってあれだろうか?あのレミリア様で言う運命を操る程度の能力とか言う奴。 「僕に能力なんてありませんよ。普通の人間ですし」 僕の言葉に紫さんは微笑を返してきた。 「貴方は理解してないだけ。前の事件だって貴方は能力を生かして生き残ったの」 「僕が能力を生かして生き残った?」 事件とは僕とレミリア様の距離が縮まったあの時のことだろう。 あの時は妖怪達の攻撃を必死に避けてたけど……。 「貴方の能力は全てに順応する程度の力って言えばいいかしらね。直接的ではないにせよ強力な能力よ」 「全てに順応する程度の能力……」 紫さんの言葉自体に僕は物凄く思い当たる節があった。 僕こと○○は自慢ではないが物凄い物事の覚えが良い。 例えばの話し、というか実話なのだけど……。 僕が紅茶を始めて淹れた時……その出来は酷かった。 だけど、次に淹れた時はまぁ飲めるレベルの紅茶が淹れられるようになっていた。 そして三度目……その時には僕は味に厳しい人でない限り大丈夫な紅茶を淹れられるようになっているのだ。 流石にそれ以上は無理だが、それが順応する程度の能力だとしたら納得出来る……かもしれない。 「でも僕に能力なんてあるわけが……」 「ふ~ん……ならなんで元の世界に帰りたいことをすぐに言わなかったのかしら?」 「それは……」 その紫さんの言葉に僕は返す言葉がなかった。 確かにレミリア様のこともある……だがそれ以上に僕は帰りたくない理由があったのだ。 僕はその順応してしまうことを心底嫌がっていたのだから。 外の世界で僕は……。 「○○!」 「え、あ!レ、レミリア様……」 僕は完全にぼんやりしていたようで、レミリア様に呼び掛けられて気付いた。 従者としては完全な失態だ。後で咲夜さんに怒られるだろうなぁ。 「○○、何をボーとしてるの?私が少し目を離してる間に何か……」 「いえ何もありませんよレミリア様……心配かけてしまいすみません」 「し、心配なんてしてない!た、ただ主として従者のことを……」 ふふ、顔を赤くして必死に言い訳をしようとするレミリア様は相変わらず可愛らしい。 まぁそんなことを言ったら怒られるから言えないけど。 「……では、僕のことを考えて頂いてありがとうございます」 「……○○。お前わかってて言ってるだろう?」 そう言ってレミリア様はそっぽを向いてしまう。 正直たまにこうやってレミリア様はからかいたくなる。 だってからかうと物凄く可愛いのだ。 咲夜さんが見てない所でしか出来ないが、実は僕の楽しみの一つだったりする。 まぁでもレミリア様がお優しいから許して貰える楽しみなんだけど。 「僕はレミリア様に大切に思われて、幸せですよ」 「○○……もう良いからそろそろ帰るわよ。少し疲れたわ」 「はい。了解しましたレミリア様」 実はという所……僕はもう空くらいなら飛べる。 レミリア様にずっと付き添うモノとして空くらいは飛べないと不便と言うことで、なんとか飛べるようになったのだ。 次は弾幕、その後はスペルカードと順々に覚えていく予定だ。 「咲夜も帰るわよ」 「はいお嬢様」 僕に続いて咲夜さんもレミリア様の背後に続いた。 というか普通僕の方が立場が下だから一番後ろのはずじゃ……。 「あの……」 「あなたを後ろにしたら誰もあなたを見張れないでしょ?」 僕の質問の意図がわかっているらしく、用件を言う前に咲夜さんが答えてくれた。 どうやらまだ僕はレミリア様を心配させちゃってるみたいだな……。 早く強くなってレミリア様に心配をかけないようにしないと……そのためにはパチュリー様に授業を増やして貰って……。 「○○?」 それに美鈴さんにも体自体を鍛えるの手伝ってもらおうかな。 効率重視ばかりじゃ偏っちゃうから……。 「○○!」 「え、あ、はいレミリア様?」 「さっきから呼んでるのに答えないとは良い度胸してるじゃない?」 僕はどうやら前を飛んでいた(これはかなり珍しい)レミリア様を怒らせてしまったようだ。 割と本気な怒気が目の前に、かなり本気な殺気を背後から感じる。 「すみませんレミリア様……レミリア様のことを考えていたらぼんやりしていたようで」 「え!?」 途端顔を真っ赤にさせるレミリア様。 怒気は一気にしぼんでいき、代わりに赤みだけが残る。 「自分でも注意はしているのですが、どうもレミリア様のことを考えると集中してしまって」 「え……あう……」 「従者としてこれではダメですね……以後気をつけるようにします」 「わ、分かれば良いのよ……分かれば」 そう言うのがやっとと言う感じでレミリア様はそう言って、そのまま先に紅魔館の方へと加速していってしまった。 不意に背後からため息が聞こえる。 「あなたわざとやってるでしょ?」 「何がですか?」 「……本人に自覚がないのか、それとも狙ってるのかわからないって始末が悪いわよね」 咲夜さんはそう言うと付いて来いとばかりに僕の手を取って加速し出した。 咲夜さんが言わんとしてることは何となく分かる。 でも仕方ないじゃないですか……あぁ言う時のレミリア様は凄く可愛いんですから。 うpろだ564 「○○の様子がおかしい」 「はぁ……」 ここ数日で何度目かわからないお嬢様の発言。 これまたいつも通り○○のことだった。 どうやら相当悩んでるらしく、先ほどから紅茶に一口しか口をつけてない。 「私に隠れて何かやっているように見える」 「……そうでしょうか?」 あのお嬢様に絶対的な忠誠を持っている○○がお嬢様に隠し事? そんなの有り得るのかしら……。 「怪しいのはパチェ……何かパチェとやっているみたいなのよね……う~ん」 唸りながら考えるお嬢様。 その様子を見てると、もうパチュリー様には聞いてみたみたいね。 多分上手くはぐらかされたんだろうけど。 「咲夜。貴女も○○が何をやっているか探ってみて」 「……直接聞けばよろしいのでは?」 「それじゃあ命令になるからやりたくはない」 確かにお嬢様が聞けば○○は必ず答える。 でも……それがお嬢様の求めるやり方じゃないのなら仕方ないわね。 「ではどことなく探ってみます」 「えぇ……期待してるわ」 最後に小さくため息をつくお嬢様。 正直な所を言えば、お嬢様にこうやって心配をかける○○を許してはおけない。 でも……○○を殺すことも傷つけることも出来ない……それはお嬢様の望むことではないから。 「とは言っても困ったわね」 お嬢様にはああ言ったが、○○に私が直接聞くわけにはいかないのよね。 私だって○○の上司に当たる役職。 上下関係を大事にする○○なら命令として受け取って、答えてしまうかもしれないし。 パチュリー様が素直に答えてくれる筈ないし……他に知ってそうな人はいないかしら。 「あ、小悪魔」 そっかパチュリー様が知ってるなら小悪魔も知ってるかもしれない。 それに小悪魔ならもしかして軽く教えてくれるかも……。 「ねぇ小悪魔?」 「咲夜さんですか?なんでしょう」 私があんまり小悪魔に話しかけたことないから少し戸惑ってるみたいね。 そんなに私怖そうかしら……。 「○○のことについて何か知らない?」 「え、○○さんのことですか……」 今あからさまにまずいっ!って顔したわね。 「わ、私は何も知りません~パチュリー様に聞いてください!!」 「あ」 これ以上追求する前に逃げちゃった……。 これ……もしかして怖がられてるの? 地味に傷つくのだけど……。 「……?咲夜さん?」 僕が図書館に向かう途中の道で咲夜さんが呆然と廊下に立ち尽くしていた。 どうしたんだろ……何か落ち込んでるようにも見えるけど。 「あの……咲夜さん?」 「……○○。私って怖い?」 「え?……いえ別に怖くないですけど」 咲夜さんは後ろから見た時よりも落ち込んだ顔をしてた。 それにしても不思議な質問だな……咲夜さんが怖いはずないのに。 「どうかしたんですか?」 「……少しね。それよりも貴方に少し聞きたいことがあるんだけど?」 吹っ切れたように普段の表情に戻った咲夜さんは改めて僕の方に向き直った。 でもあからさまに後に引いてるような顔をしてるけど。 「貴方、お嬢様に何か隠し事をしてるわね?」 「……はい」 咲夜さんの質問の内容に僕ははいと答えるしかない。 だって咲夜さんに嘘をつくことは出来ない。 それが大変なことでも、聞かれた以上答えなきゃならないんだ。 「素直に答えたわね……じゃあそれはお嬢様に知られると困ること?」 「……はい。今は……まだ」 そう答えた僕の顔は少し苦笑いでもしてたかもしれない。 だって咲夜さんはメイド長。 使用人が主に隠し事をしてるなんて許してくれるはずはない。 レミリア様に報告もきっとするだろう。 「……それはお嬢様にとって良いこと?」 「それは……わかりません。僕の自己満足で終わるかもしれませんし、そうならないかもしれません」 僕の曖昧な答えに咲夜さんはあからまさにわかるくらい大きくため息をついた。 「……お嬢様が心配してるの。早くお嬢様を安心させてあげて」 「え……?咲夜さん報告するんじゃ……」 僕の質問に咲夜さんは少し子供染みた、それでいて少女のような笑みを浮かべて笑った。 こんな顔始めて見たかもしれない……。 いつもメイド長ってイメージしかないから……。 「数日だけ待ってあげる。その代わり必ずお嬢様を喜ばしてあげて」 それだけ言うと咲夜さんは僕の横を通り過ぎて去っていこうとしてしまう。 まずい、これだけは言ってから……。 「ありがとうございます咲夜さん!!それと……僕は咲夜さんのこと怖いんじゃなくて可愛いと思いますよ!」 ってあれ?僕が叫んだ瞬間咲夜さんの姿が消えた。 時間を止めてさっさと行っちゃったのかな……さっきの聞こえてると良いけど。 「え、え、えぇ!?い、今○○私を可愛いって……~~~~~」 「出来た……うん。これならきっと……」 仕事の合間を見て図書館でパチュリー様の修行を受けながら完成させてきたコレ。 コレがあればきっとレミリア様も喜んでくれる。 「……良くもまぁこれだけのを作ったわね。あなた人間にしとくには惜しいんじゃない?」 「そんな……コレ一つ作るのにこんなに苦労しましたから」 パチュリー様の褒め言葉がなんだかくすぐったい。 あんまりこのお方は人を褒めないからなぁ……。 「ありがとうございますパチュリー様。パチュリー様のお蔭で……」 「……私にお礼は良いからレミィに早く持っていてあげなさい。小悪魔、包装を」 「はい~」 ふふ、僕にお礼を言われてパチュリー様少しだけ赤くなってますね。 相変わらずこのお方はお礼を言われることに慣れてないんですから。 「それじゃあ行ってきます」 「報告、待ってるわ」 「頑張ってくださ~い」 パチュリー様と小悪魔さんに見送られ、図書館を後にする僕。 向かうはレミリア様の所。 これを早く渡さなきゃ……。 「や、やっと来たのね○○。お嬢様が中でご立腹よ」 お嬢様の部屋の前では咲夜さんが少しだけ顔を赤くして待っていた。 あれ……?なんで咲夜さん顔赤いんだろ? 「あの……どうかしたんですか?」 「い、良いから○○は部屋に行きなさい!」 無理矢理押し切る感じで咲夜さんに部屋に押し込まれてしまった。 どうしたんだろ……まぁそれよりも今はレミリア様!? 「……何しに来た」 似合わない威圧口調まで使われて……物凄い不機嫌なようですねレミリア様。 でも……そのお顔はお似合いになりませんよ? 「すみません……無礼を覚悟で失礼します」 「えっ……ちょ○○!?」 一気に歩み寄った僕に、レミリア様は焦ったように一歩下がる。 そうそう威圧口調より、そっちの方が可愛らしいですよ。 「これをお受け取りください。僕の……傑作です」 手を取りレミリア様の小さい手に箱を置く。 どうやらレミリア様は唖然として何も言えないようだ。 「お開け頂けると光栄です」 「…………」 レミリア様は無言で箱を開けていく。 あの中に入ってるアレ……喜んで頂ければ良いけど。 「これは……」 ○○に強引に渡された箱に入っていたのは、赤いとてもとても綺麗な宝石だった。 私が見る方向を変えるたびに赤い色が少しづつ変わる不思議な石……とても綺麗な魔法の石……。 「レミリア様にお世話になってから……何もお礼をしていなかったので」 そう言って○○は優しく笑った。 その笑顔は……さっきまであった不安や苛々を全部消してくれて……。 「本当はアクセサリーに加工しようと思ったんですが……時間とか足りなくて」 心の奥から何か暖かいものが込み上げてくるようだった。 この私が……人間からのプレゼントで感動してると言うの? ……バカらしいって言い切れれば……良かったんだけどね……。 「……このために最近?」 「はい。沢山の宝石を魔法で加工して一つにするためにパチュリー様に教えてもらいながら少しづつ……」 「……そう」 もう怒る気なんか完全に無くしてた。 ……お節介な執事め。 こんな嬉しいこと……簡単にするんじゃない……。 私は嬉しいことを意識すると急に恥ずかしくなり、何も言えなくなってしまった。 ○○が嬉しそうに笑ってる所を見ると、私の顔は真っ赤なのだろう。 でも何か心地よい……そんな気分だった。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ565 今日こそ何もない一日を望んでる……と思いたい。 正直な所、僕こと森近霖之助に平凡な日常など皆無である。 主に毎日のように現れる略奪者の仕業なんだが……。 まぁ長い生のほとんどは長い暇潰し……今日もその暇潰しを満喫させてもらうとするか。 「香霖!今日も来てやったぜっ!」 「……毎日来てるね。暇なのかい魔理沙?」 一番の略奪者である魔理沙はほぼ毎日ここ香霖堂に現れる。 でも同時に僕は魔理沙の持ってる品をほぼ騙し取ってるから何も言えないのだが。 「何言ってるんだ。私が来ないと香霖にいつの間にかキノコが生えるじゃないか」 そう言って魔理沙は許可もしていないのに勝手に上がって行く。 いつものことだから今頃何も言わないが……僕はそんなキノコが生えるような生活をしてるかい? 「はぁ……いい加減ツケを返して欲しいんだけどね」 「だからこうやって夕飯を作りに来てやってるだろ?」 「きみも「お邪魔するわよ」……今名前を出そうとした霊夢も夕飯をたかりに来ただけにしか思えないんだが?」 次に現れた霊夢。 ツケを払わない第二号で略奪者の一人。 まぁ基本はお茶とかだから被害自体はそんなに大きなものではないのだけど。 「魔理沙も来てたの?じゃあ私も食べてくわ」 「……何がじゃあなのか良く分からないんだが?」 勿論霊夢は僕の言葉なんて気にせず魔理沙の方に言ってしまう。 いつもそうなんだが、ここが僕の店であることが分かってるんだろうか? 「香霖~?塩はどこにいったんだ?」 「塩は奥の棚だよ。この前取られたからね移動させたんだ」 ってしまった。霊夢に取られないために移動させたのに意味がないじゃないか。 はぁ……これでまた僕の家から塩が消えていくか……。 「先に言っておくけど今日は少し商談があるからあんまりうるさくしないでくれよ?」 「「商談?」」 珍しい言葉を聞いたとばかりに魔理沙と霊夢が同時に顔をこっちに向けた。 「あぁ正直この商談が上手くいかないとしばらくかなり苦しいんだ」 「霖之助さんもそんな生活苦しいの……?」 そんな同志を見るような目で僕を見ないでくれ霊夢。 きみも苦しいのは分かっているが、同志みたいに見られると何か辛い。 「香霖に商談をするなんてどうかしてるぜ」 「魔理沙……何度も言ってるけどここは店なんだからな?」 「分かってるぜ?」 満面の笑みを浮かべながら魔理沙は相当失礼なことを言い、台所に戻っていく。 多分もう興味を失ったんだろう。 それで商談の相手って誰なの?」 どうやら霊夢はまだ興味があるみたいだな。 でもいい加減売り物のツボに座るのは止めてくれないか? 「あぁ多分そろそろ……」 とそんなことを言った途端ノックが来たな。 ここにノックをする人なんて本当に少ないからすぐに分かる。 「入ってくれて構わないよ」 そして扉が開き、そこには……。 「森近さん遅くなりましてすみません」 「いや問題ないよ。いらっしゃい」 今日の商談相手は始めての相手である○○だ。 どうやら外の世界の人間らしいけど……この妙に似合ってる執事服を見てると、妙に馴染んでいる。 「えっと……○○だっけ?レミリアの執事の」 「はい。霊夢……うん。敬意を払う必要はないって言われてますから、呼び捨てで良いですよね?」 どうやら霊夢は○○と初対面に近いみたいだ。 まぁそう言う僕もこの前始めて○○がここを訪れたのが始めて会った時だが。 「敬意を払う必要ないって……レミリアが言ったの?」 「いえレミリア様は何も。言ったのは咲夜さんです」 「咲夜の奴……まぁ良いけどね呼び捨てで」 「ご理解頂けて嬉しいですよ」 霊夢と話す○○の物腰は柔らかだがどこか人間味が薄い。 いつもこうなのかはわからないが、変わった人間であることには変わらないな。 「それでだ○○。今日の商談だが……見ての通り霊夢と魔理沙が来ていてね。二人がいてダメなら後日になるが……」 「あぁいえ構いませんよ。霊夢や魔理沙がいても僕にとって問題は特にありませんから」 僕の配慮に○○は薄っすらと笑って返してきた。 まぁ○○が良いのなら僕は別に構わないのだが……。 「○○、あなたレミリアの執事なのにお金あるの?」 「……霊夢。レミリア様はご自分の部下に何も与えないような貧困な心の持ち主ではありませんよ?」 霊夢の言葉に少し呆れたような表情の○○には先ほどより遥かに人間味がある。 どうやらレミリア関係になると感情が出てくるらしいね。 だがそれよりもだ。 「霊夢、商談をするから少し下がっててくれないか?○○との雑談になってしまう」 「あらそう。じゃ勝手に上がってお茶を飲んでるわ」 僕の言い分に珍しく簡単に乗ってくれ、霊夢は魔理沙のいる方に戻っていった。 これでやっと商談が出来る。 「とりあえず用意した椅子がある。お茶を持ってくるから座ってくれ」 「はい……失礼します」 僕が一旦お茶を持って戻ってくると、○○は座った体勢のまま動くことなく待っていた。 完璧なる従者を徹底してるってことか……。 いや実は執事になるために生まれてきたのか!? ……まぁ冗談は置いておくとして、少し徹底しているのは気になるな。 「さて商談に入ろうか。確か外から取れた貴金属……主に宝石に当たるものが欲しいんだったね?」 「はい。在庫の方はどうなってますか?」 「案外多く手に入れることが出来てね。値は少しあるが、それなりの量があるよ」 そう言いながら僕の出した袋をじっと見ている○○。 実際の年齢は良く知らないが、こう言った所を見るとまだまだ子供のような好奇心があるな。 そういう意味ではレミリアと良くお似合いなのか? 「えっと……宝石が出来るだけ欲しいんです。あんまり僕はお金を持ってない方ですけど……ってどうかしましたか?」 「い、いやなんでもないんだ……」 略奪者しかいないこの店に客が……お金をきちんと払おうとするお客がいるよ……。 おっと感動のあまり泣きそうになった。 「おーい香霖?商談まだ……って○○?」 「魔理沙、まだ商談は終わってないよ」 「香霖……?森近さんそれって……」 「あぁ僕のことだよ」 「へぇ……」 何故か○○は口の中で小さく何か呟いている。 何か……まさか何か良からぬことを考えているんじゃ!? ……まぁ魔理沙じゃあるまいし、そんなことあるわけないか。 「なんだ商談の相手は○○だったのか。香霖に商談をするなんて時間の無駄だぜ?」 「……ちょっと待ってくれ魔理沙。時間の無駄とはどういう意味だい?」 「そのまんまの意味だぜ」 「……仲が宜しいんですね」 いつものように魔理沙と話していると、○○が子供のような笑顔を見せて笑っていた。 僕が何かそんな面白いことをしただろうか。 「へ~○○の笑う顔って始めて見たかもしれないぜ」 「そうですか?僕はそれなりに笑ってるつもりですが……」 「そいつそんなに笑わないの?」 魔理沙の話しに○○も乗ってしまったか……。 霊夢も乱入してきたし、これはしばらく商談はお流れかな……まぁ良いさ。 ○○が随分と子供な顔をしてるからね。 「すみません。商談を忘れて話し込んでるなんて……」 「良いんだよ。物を買おうという意思すらない誰かさん達と比べればね」 僕の皮肉交じりの言葉にも魔理沙はどこ吹く風だし、霊夢はお茶をのんびりと飲んでる。 きみ達のことなんだけどね。 「いえでも宝石は買っていかないと……これで買えるだけの宝石をくれませんか?」 そう言って出した袋を僕は受け取っ……重!? 「こ、これはどれくらい……うわ!」 思わず僕は叫んでしまった。 物凄い量のお金がそこには入っていたのだ。 これだけあれば僕が出した宝石を全部買ってもお釣りが来るぞ!? 「一体どこでこんなに……」 「レミリア様からは一応お給料を貰ってますから……今までもらった全額ですけど?」 「全額!?それじゃ生活はどうするんだい?」 「食事は館で出ますし……別に欲しいものとかないんですよ僕」 はっきりと言い切った……。 これは実はアレか!?僕の店で買い物をしたことを口止めするための口止め料……って○○がそんなことする意味ないじゃないか。 「じゃじゃあその宝石は……」 「魔法の練習に使う分とあとは砕いて錬金してお嬢様にプレゼントしようかと」 「……正直脱帽だよ○○。きみは完璧なまでに執事なんだね」 呆れる……というかもう関心するしかなかった。 どうやら意思がないと言う心配も杞憂だったみたいだ。 「ではこれで……今日はありがとうございました。香霖さん」 「え……」 僕がまともな反応を返す前に○○は扉から急いで去っていってしまった。 今確かに香霖さんと呼んだような気がするけど……。 「香霖~終わったなら飯食おうぜ~」 「……あぁ今そっちに行こう」 まぁ……良いだろう。 今度○○が来た時にでも確認すれば良いさ。 そうして珍妙な客による多額の商談は終わった……。 結果は珍しく僕の黒字で終わるのだった。 珍しくは余計さ。 ─────────────────────────────────────────────────────────── うpろだ595 ○○は私の完全なる従者。 ○○は私のもの。 ○○は私を愛して……本当に○○は私の愛してる? ……この綺麗な宝石を私のために作った○○……でもそれはただの感謝の気持ち? わからない……私が、夜の王がここまで悩まさせられるなんて……。 でもダメ……○○が成長するまで待てると思ったけど……私はもう耐えられない。 ○○……○○……。 「う……」 私は悪夢の中に目を覚ました。 悪夢の内容は最悪な気持ちながら覚えてる……。 く……この私があんな……私はこんなに弱い奴だったか? 「……くそ」 私は立ち上がり窓に目を向けた。 夜空に浮かぶ月……どうやら私の夜らしいな……。 「咲夜」 「はいお嬢様」 「身支度を整えて。少し……いや大切な用事があるわ」 「?……かしこまりました」 私の態度に咲夜は少しだけ疑問を持ったみたいだけど……関係ない。 咲夜は完璧な従者……私の命令を完璧にこなしてくれる。 今夜が勝負……私はやるしかない。 必ずあいつを……私のものに。 「……今日はレミリア様にお会い出来なかったなぁ」 月の浮かぶ闇夜、結局僕は咲夜さんに押し切られ起きるのが遅いレミリア様を待たずに部屋に入れられてしまった。 なんでも咲夜さん曰く、僕が眠そうだと咲夜さんがレミリア様に怒られるらしい。 咲夜さんにはお世話になってるし、出来れば迷惑かけたくないけど……一日一回は会いたかったなぁ。 「……はぁ」 僕はレミリア様の望むような従者になれてるだろうか? いやまだ足りない……でも少しは追いつかないと……。 僕には寿命があるんだ……時を操れる咲夜さんや、魔女であるパチュリー様。 妖怪である美鈴さんに吸血鬼のレミリア様……みんな長い寿命を持ってる。 僕だけが死ぬ……でも死ぬ前に……レミリア様の望む人間に……。 「○○」 「……え?レミリア様?」 なんでだろう?レミリア様がなんで僕の部屋の窓の所に……。 それもそんな悲しいお顔をなされて……。 「○○……起きてたみたいね」 「……はいレミリア様。すみません主の起床に立ち会わず」 「そんなの別に良い……」 レミリア様……? 僕に迫ってくるレミリア様。 そのお顔はとても苦しそうで……僕は何も出来なかった。 そしてレミリア様は僕の顔の目の前まで来ていた。 「○○……あなたは私のもの。だから受け入れなさい」 「!?」 レミリア様……? なんでレミリア様は僕の首を……噛んで……。 あぁそっか……これは吸血鬼であるレミリア様が眷属を……。 「……○○」 私はきっと最低なことをしただろう。 ○○は私が何をしても抵抗しない……それがわかってて私はこんな真似をしたんだから。 一瞬驚いた顔をしていたけど、○○の顔は何故か穏やかだった。 なんで……あなたは血を吸われたのよ? 「……レミリア様」 「○○!?」 ○○の意識はすぐに戻ったらしく、急に私を抱きしめてきた。 その力は強く……でもとても安心出来るものだ。 「ありがとうございますレミリア様」 「あり……がとう?」 私は○○の言葉がしばらく理解できなかった。 私は無理矢理○○を眷属にしたのに……ありがとう? 「なんで……」 「僕は嬉しいんです……愛するレミリア様の眷属になれて」 「あ……」 ○○のその言葉で私の力はフッと抜けていった。 そっか……始めから何も心配する必要なんてなかったたんだ……。 ○○は始めから私を愛してた……そんなわかりきったことを疑う必要なんて……なかったんだ。 「……ごめん……なさい○○」 急に自分が恥ずかしくなった私は、恥も何もかも捨てて○○に謝った。 ちゃんと私を愛してくれていた○○に……。 「……謝る必要なんてありませんよレミリア様。それに……泣かないでください。僕が悲しくなりますよ」 ぎゅっと私が落ち着くように○○は私を抱きしめてくれる。 それがなんだか凄く嬉しくて……始めて私は他人の胸の中で涙を流して泣いた……。 「○○……良い?あなたは私のもの……それは間違いない」 「はいレミリア様」 泣き止んだレミリア様はまだ残る涙を拭きながらそんなことを言ってきた。 どうやら僕の体は凄く吸血鬼に馴染むみたいで……レミリア様に噛まれた傷は早くも再生を始めていた。 しかし吸血鬼になってもあんまり感覚は変わらないんだなぁ……。 「でも同時に……私は○○のもの。私を愛する限り……私をものに出来るのよ」 「そんな……僕がレミリア様をものにするなんて」 「……あなただけなんだから。私を泣かせたあなたが……私を唯一ものに出来る」 そう言ってレミリア様はもう一度僕に抱きついてきた。 僕は少し驚いていたけど……笑って抱きしめ返してあげた。 「……○○。私の眷属になったんだから……私に頼るだけではなく頼らせなさい」 「はい……レミリア様」 「私を愛して……一番。ずっと思いっきり」 どこか言い聞かせるようなレミリア様の言葉。 でもその全てが僕にとって嬉しくて……思わずこう口にしていた。 「もちろんです……ずっとあなたを愛しますよ……レミリア……」 ───────────────────────────────────────────────────────────
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僕はあの日、あのお方に出会った。 時に優しく、時に怖い僕の最愛の人。 始めて会った時から僕はあの人にただ惹かれていた。 向こうではなんでも出来てしまった僕。 僕を変えたものの全てに……僕は感謝してます。 「○○、そっちはもう良いわ。こっちをお願い」 「はい。メイド長、じゃなくて……咲夜さん」 僕は今日もまた咲夜さんの手伝いをしていた。 この幻想郷に迷い込んできてはや1週間……なのかな? とりあえず色々あってここ、悪魔の住む屋敷、紅魔館に住み込むようになってからは1週間か。 最初は少し大変だったけど、いつものようにすぐに慣れた。 一通り屋敷のことは覚えたし、もうお茶も満足いくレベルのが淹れられる。 一応従者では合格点を貰えるくらいの実力なんだ。 咲夜さんには全く勝てないけど。 「今日は他にやることはありますか?」 「……いや今はないわね。でもそろそろお嬢様が起きてくるから、少し休んでて」 「そうですか……では少し失礼します」 咲夜さんとは一応同僚兼上司の関係。 とは言っても咲夜さんはメイド長で、僕は一介の従者。 本来物凄い立場の差があるはずなのに、僕は特別扱いを受けている。 それは全て……僕がレミリアお嬢様付きの従者だからなんだよね……。 「○○、今日も外には出ていないわよね?」 「はい。レミリアお嬢様の言う通り、今日も一歩も出てません」 僕は何故か森で発見され、ここ紅魔館に連れてきてもらってから、レミリアお嬢様の命令で一度も外に出てない。 レミリアお嬢様の命令なら逆らう理由はなんだけど……一応疑問には思ってるんだけど、聞けないし。 他にも屋敷が騒がしい時には図書館やパチュリー様に近づくなとか……良くわからない命令が多い。 だから僕はこの幻想郷の森と、紅魔館しか見たことない。 でもまぁ問題ないかな? 僕はただレミリアお嬢様のお側に居られればそれで……。 「レミリアお嬢様はお出掛け……少し暇だなぁ……」 実際レミリアお嬢様がいないと僕の仕事はないに等しい。 基本的な仕事をあんまりやると咲夜さんに怒られるし、図書館には轟音が鳴っていて近づけない。 だから今日は一日部屋でのんびり……してて良いのかなぁ。 「レミリアお嬢様……」 気付くと呟いてる我が最愛の人の名前。 あの日、幻想郷に迷い込んだ僕を救ってくれたレミリアお嬢様。 始めは確かに食料として確保してたみたいだけど……僕のあの言葉から突然変わった。 正直な所……僕がもう少し普通の感性を持っていたら……今ここにはいなかったんだろうな。 でも……僕はレミリアお嬢様との出会いを最高だと思ってる。 「人間。貴方は私に食われるの。覚悟は良い?」 そう言って木の幹に体を預けていた僕の前に一人の少女が立った。 対する僕と言えばきっとまねけな表情をしていたに違いない。 だって……始めて見たから……思わず声に出てた。 「……可愛い」 はっきり言って○○との出会いは最悪だった。 このレミリア・スカーレットに向かってあいつが放った第一声。 未だに耳に残って離れない。 この私に向かって、ただの人間に過ぎない○○が……あろうことか自分を食おうとしてる私を可愛い!? 正直、怒りを簡単に通り越して呆れがあった。 そして最後に出たのは興味。 私を全く恐れないこの人間……傍に置いたらどうなるか……興味があった。 だから館に軟禁状態にして咲夜に世話をさせてる。 どうやら○○は私のために働きたいらしく、従者にしてやったら妙に喜んでた。 ……別に喜ばしたかったわけじゃないけど……まぁ喜んでるならそれで良かった。 でも流石にそろそろ限界か……パチェや咲夜、小悪魔や美鈴だけに○○の存在はわかってる。 そう○○は外の人間。 霊夢やあのスキマにばれれば外に帰る話が出る。 もう○○は私の物。 誰にも渡すわけにはいかないのだ……。 「収穫はなし……か」 霊夢の所にわざわざ偵察に来てみたが、霊夢は相変わらず。 特にバレてるようでもないし、感づいてる様子もなし。 こういう偵察は咲夜に任せようかと思ってたけど……何故か自分で来てた。 どうも最近の私は変だ。 ○○のことになると、自分で確認しないと安心できない。 しかもこうやって早く帰って○○の顔を見ないと安心出来ない。 どうしたと言うのだろうか……この私が……。 だがこの時私はぬかっていた。 この運命を操る私なら気付くはずだったことを……私は気付いてなかったのだ。 「……困ったなぁ」 僕は心底困ってた。 僕はレミリアお嬢様から館から出ないよう命令を受けている。 でも……あの三人の見慣れない妖精の仕業で僕は今知らない森の中にいた。 紅魔館から出たことのない僕は正直な所外に出てしまえば右も左もわからない。 しかもただの人間である僕が飛べるはずもなく……完全に迷子になっていた。 「レミリアお嬢様に叱られるだろうな……命令も破っちゃったし」 僕は普通の人間だし、夜もだいぶ近づいてきた。 このままじゃ僕は妖怪に食われてしまうだろう。 でも……帰り道はわからない。 仕方なく僕は当ても無く歩くしかなかった。 「○○がいない!?」 「は、はいっ。見ても部屋に姿がなくて……今メイド達に探させています」 帰った私を待っていたのは、咲夜の○○不在の報告だった。 ○○が逃げ出すとは思えない。 だが実際○○の姿はない……私の落ち度だ。 「くっ!!」 「お嬢様!?」 私は咲夜の静止の声も聞かず再び外に飛び出した。 もう夜になる……ただの人間である○○は妖怪の餌でしかない。 そんなことはさせない。 ○○は私の物だ!私以外の奴に好き勝手にされてたまるもんか! 「はぁ……はぁ」 迷いに迷った僕は予想通り妖怪に追われていた。 しかも一匹どころじゃない。 走れば走るほどその数は増えていき、今はもうどんな数になってるか予想もつかない。 でも捕まるわけにはいかない……命が惜しいんじゃない。 でも僕の命を誰かに渡すわけにはいかないんだ! 「っ!!」 そんな僕に追い討ちをかけるかのように飛んでくる妖怪の弾幕。 だがあんなのはもう慣れた。 体が追いつくかはわからないけど、そんなの当たるはずがない! 「!!」 こんな人間に避けられているのが腹が立つのか、弾幕は更に激しさを増し、僕を打ち倒そうとしてくる。 でも弾幕をいくら厚くしてもパターンは一緒。 だから慣れている僕に当たるはずはなかった。 普通は当たらないはずだったのだ。 「が!?う……」 だが現実は違った。 僕の体の疲労は思ったより激しかったらしく、思ったような動きが出来なかった。 僕は弾幕を数発受け、地面に転がった。 あぁ……レミリアお嬢様から貰った執事服……汚しちゃったな……。 でも……執事服が汚れても逃げるのを止めるわけにはいかない……。 僕の命なんか惜しくない。 でも……この命はもはや僕一人の命ではない。 いやもう僕の命じゃないんだ。 僕の命はあの時救って頂いた、最愛の人……レミリアお嬢様の物なんだ! 「う……わぁぁぁぁぁ!!!」 僕は自分を奮い立たせるために叫び、また走り出した。 体なんかもうとっくに限界を超えてる。 妖怪の放った弾幕によって痛めた足や背中が酷く痛む。 それでも走らなきゃ……僕はレミリアお嬢様の所に帰らなきゃならないんだ……。 「う……うぐぅ……」 何度目か分からない転倒。 妖怪達は狩でも楽しむかのように僕が逃げるのを見ている。 でも好都合だ。 すぐに殺されないなら走れる。逃げれる。 でももう……僕の手足は言うことを聞いてくれなかった。 足が片方変な方向に曲がってる。 今かその前に転んだ時にやられたんだろう。もう感覚がなかった。 それに気付いた妖怪達はつまらなそうに僕に近寄ってくる。 あぁ……申し訳ありませんレミリアお嬢様……貴女に頂いたこの命……こんな妖怪達に散らされてしまって……。 「○○!!」 あぁ……レミリアお嬢様のお声だ……。 大丈夫ですよ……そんな泣きそうな声をしなくても。 僕は貴女様の物……どこにも……行ったりは……。 「……え?」 気付いた時には僕は知らない場所にいた。 白いベットに横たわる僕……そうか、ここは僕の世界の病院に似てるんだ。 紅魔館にこんな所あったかな? 「気付いたみたいね」 「貴女は……」 「私は八意永琳。驚いたわよ。血相を変えたこの子が、貴方を背負って永遠亭に飛び込んできた時は何かと思ったわ」 「この子……?あ、あれ?レミリア……お嬢様」 近くの椅子に座った不思議な女の人、永琳さんの言葉でベットの重みに気付くと、上半身を起こしてみて見ていた。 そしてそこにはレミリアお嬢様が寝ていた。 服は乱れ、酷く疲れていたように寝ている……なんでここにお嬢様が。 「そういえば……僕は妖怪に襲われて……まさかレミリアお嬢様が助けて」 「見た所そうね。大事にされてるみたいで良かったじゃない」 「それは……嬉しいですけど」 永琳さんはからかうような目線で僕を見てくる。 でもどうやらまたレミリアお嬢様に命を救ってもらったみたいだ。 この……なんとも可愛らしい、僕の最愛の人に。 「ん……○○?」 「あら、起こしちゃったみたいね。私は少し出てるからごゆっくり」 「レミリアお嬢様……」 永琳さんは出て行ってしまい、僕はレミリアお嬢様と二人きりで残される。 レミリアお嬢様はまだ起ききってないらしく、まだ目が空ろだ。 「レミリアお嬢様……申し訳ありません。命令を……破ってしまって」 僕はもう一度名前を呼んで謝る。 だがあまりレミリアお嬢様から反応は返ってこない。 「僕の最愛の方レミリアお嬢様、僕はどんな罰でも受けましょう……僕は!?」 そこまで言った所で不意にレミリアお嬢様が僕に抱きついてきた。 僕は何も言えずに固まってしまう。 「……○○……なんで勝手なことした……」 レミリアお嬢様の強がるような、似合わない口調。 泣きそうなのを堪えているのが、僕にはわかってしまった。 「申し訳……ありません」 「許さ……ない。でも……生きてて良かった」 レミリアお嬢様はそう言うと、体を震わせてそのまま何も言わなくなった。 泣いて……いるのだろう。 レミリアお嬢様は優しい、だから……僕のために泣いてくれているのだ。 そう思うと、僕は自然に言ってしまった。 「大好きです……レミリアお嬢様」 結果だけ言えば僕の無謀なプロポーズは簡単に断られた。 従者の身である僕がレミリア様の夫になるのはダメなのだ。 でも僕は今でもレミリア様の隣にいる。 いやむしろ……あれからと言うもの僕の外出禁止の命は解かれ、逆にレミリア様が外に出る時に必ず付き添うようになっていた。 そして必ず毎日レミリア様はこう言うのだ。 「良い?必ず私に相応しい男になりなさい。これが……貴方に与える永遠の命令よ」 はい……レミリアお嬢様。 うpろだ537 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「貴方、自分に能力があるの理解してる?」 「え……?」 それはいつものように神社の宴会にレミリア様の付き添いで来てた時だった。 前に元の世界に帰る話しをした(勿論断った)、えっと……たしか八雲紫さんが不意にそんなことを言ってきた。 えっと能力ってあれだろうか?あのレミリア様で言う運命を操る程度の能力とか言う奴。 「僕に能力なんてありませんよ。普通の人間ですし」 僕の言葉に紫さんは微笑を返してきた。 「貴方は理解してないだけ。前の事件だって貴方は能力を生かして生き残ったの」 「僕が能力を生かして生き残った?」 事件とは僕とレミリア様の距離が縮まったあの時のことだろう。 あの時は妖怪達の攻撃を必死に避けてたけど……。 「貴方の能力は全てに順応する程度の力って言えばいいかしらね。直接的ではないにせよ強力な能力よ」 「全てに順応する程度の能力……」 紫さんの言葉自体に僕は物凄く思い当たる節があった。 僕こと○○は自慢ではないが物凄い物事の覚えが良い。 例えばの話し、というか実話なのだけど……。 僕が紅茶を始めて淹れた時……その出来は酷かった。 だけど、次に淹れた時はまぁ飲めるレベルの紅茶が淹れられるようになっていた。 そして三度目……その時には僕は味に厳しい人でない限り大丈夫な紅茶を淹れられるようになっているのだ。 流石にそれ以上は無理だが、それが順応する程度の能力だとしたら納得出来る……かもしれない。 「でも僕に能力なんてあるわけが……」 「ふ~ん……ならなんで元の世界に帰りたいことをすぐに言わなかったのかしら?」 「それは……」 その紫さんの言葉に僕は返す言葉がなかった。 確かにレミリア様のこともある……だがそれ以上に僕は帰りたくない理由があったのだ。 僕はその順応してしまうことを心底嫌がっていたのだから。 外の世界で僕は……。 「○○!」 「え、あ!レ、レミリア様……」 僕は完全にぼんやりしていたようで、レミリア様に呼び掛けられて気付いた。 従者としては完全な失態だ。後で咲夜さんに怒られるだろうなぁ。 「○○、何をボーとしてるの?私が少し目を離してる間に何か……」 「いえ何もありませんよレミリア様……心配かけてしまいすみません」 「し、心配なんてしてない!た、ただ主として従者のことを……」 ふふ、顔を赤くして必死に言い訳をしようとするレミリア様は相変わらず可愛らしい。 まぁそんなことを言ったら怒られるから言えないけど。 「……では、僕のことを考えて頂いてありがとうございます」 「……○○。お前わかってて言ってるだろう?」 そう言ってレミリア様はそっぽを向いてしまう。 正直たまにこうやってレミリア様はからかいたくなる。 だってからかうと物凄く可愛いのだ。 咲夜さんが見てない所でしか出来ないが、実は僕の楽しみの一つだったりする。 まぁでもレミリア様がお優しいから許して貰える楽しみなんだけど。 「僕はレミリア様に大切に思われて、幸せですよ」 「○○……もう良いからそろそろ帰るわよ。少し疲れたわ」 「はい。了解しましたレミリア様」 実はという所……僕はもう空くらいなら飛べる。 レミリア様にずっと付き添うモノとして空くらいは飛べないと不便と言うことで、なんとか飛べるようになったのだ。 次は弾幕、その後はスペルカードと順々に覚えていく予定だ。 「咲夜も帰るわよ」 「はいお嬢様」 僕に続いて咲夜さんもレミリア様の背後に続いた。 というか普通僕の方が立場が下だから一番後ろのはずじゃ……。 「あの……」 「あなたを後ろにしたら誰もあなたを見張れないでしょ?」 僕の質問の意図がわかっているらしく、用件を言う前に咲夜さんが答えてくれた。 どうやらまだ僕はレミリア様を心配させちゃってるみたいだな……。 早く強くなってレミリア様に心配をかけないようにしないと……そのためにはパチュリー様に授業を増やして貰って……。 「○○?」 それに美鈴さんにも体自体を鍛えるの手伝ってもらおうかな。 効率重視ばかりじゃ偏っちゃうから……。 「○○!」 「え、あ、はいレミリア様?」 「さっきから呼んでるのに答えないとは良い度胸してるじゃない?」 僕はどうやら前を飛んでいた(これはかなり珍しい)レミリア様を怒らせてしまったようだ。 割と本気な怒気が目の前に、かなり本気な殺気を背後から感じる。 「すみませんレミリア様……レミリア様のことを考えていたらぼんやりしていたようで」 「え!?」 途端顔を真っ赤にさせるレミリア様。 怒気は一気にしぼんでいき、代わりに赤みだけが残る。 「自分でも注意はしているのですが、どうもレミリア様のことを考えると集中してしまって」 「え……あう……」 「従者としてこれではダメですね……以後気をつけるようにします」 「わ、分かれば良いのよ……分かれば」 そう言うのがやっとと言う感じでレミリア様はそう言って、そのまま先に紅魔館の方へと加速していってしまった。 不意に背後からため息が聞こえる。 「あなたわざとやってるでしょ?」 「何がですか?」 「……本人に自覚がないのか、それとも狙ってるのかわからないって始末が悪いわよね」 咲夜さんはそう言うと付いて来いとばかりに僕の手を取って加速し出した。 咲夜さんが言わんとしてることは何となく分かる。 でも仕方ないじゃないですか……あぁ言う時のレミリア様は凄く可愛いんですから。 うpろだ544 「○○の様子がおかしい」 「はぁ……」 ここ数日で何度目かわからないお嬢様の発言。 これまたいつも通り○○のことだった。 どうやら相当悩んでるらしく、先ほどから紅茶に一口しか口をつけてない。 「私に隠れて何かやっているように見える」 「……そうでしょうか?」 あのお嬢様に絶対的な忠誠を持っている○○がお嬢様に隠し事? そんなの有り得るのかしら……。 「怪しいのはパチェ……何かパチェとやっているみたいなのよね……う~ん」 唸りながら考えるお嬢様。 その様子を見てると、もうパチュリー様には聞いてみたみたいね。 多分上手くはぐらかされたんだろうけど。 「咲夜。貴女も○○が何をやっているか探ってみて」 「……直接聞けばよろしいのでは?」 「それじゃあ命令になるからやりたくはない」 確かにお嬢様が聞けば○○は必ず答える。 でも……それがお嬢様の求めるやり方じゃないのなら仕方ないわね。 「ではどことなく探ってみます」 「えぇ……期待してるわ」 最後に小さくため息をつくお嬢様。 正直な所を言えば、お嬢様にこうやって心配をかける○○を許してはおけない。 でも……○○を殺すことも傷つけることも出来ない……それはお嬢様の望むことではないから。 「とは言っても困ったわね」 お嬢様にはああ言ったが、○○に私が直接聞くわけにはいかないのよね。 私だって○○の上司に当たる役職。 上下関係を大事にする○○なら命令として受け取って、答えてしまうかもしれないし。 パチュリー様が素直に答えてくれる筈ないし……他に知ってそうな人はいないかしら。 「あ、小悪魔」 そっかパチュリー様が知ってるなら小悪魔も知ってるかもしれない。 それに小悪魔ならもしかして軽く教えてくれるかも……。 「ねぇ小悪魔?」 「咲夜さんですか?なんでしょう」 私があんまり小悪魔に話しかけたことないから少し戸惑ってるみたいね。 そんなに私怖そうかしら……。 「○○のことについて何か知らない?」 「え、○○さんのことですか……」 今あからさまにまずいっ!って顔したわね。 「わ、私は何も知りません~パチュリー様に聞いてください!!」 「あ」 これ以上追求する前に逃げちゃった……。 これ……もしかして怖がられてるの? 地味に傷つくのだけど……。 「……?咲夜さん?」 僕が図書館に向かう途中の道で咲夜さんが呆然と廊下に立ち尽くしていた。 どうしたんだろ……何か落ち込んでるようにも見えるけど。 「あの……咲夜さん?」 「……○○。私って怖い?」 「え?……いえ別に怖くないですけど」 咲夜さんは後ろから見た時よりも落ち込んだ顔をしてた。 それにしても不思議な質問だな……咲夜さんが怖いはずないのに。 「どうかしたんですか?」 「……少しね。それよりも貴方に少し聞きたいことがあるんだけど?」 吹っ切れたように普段の表情に戻った咲夜さんは改めて僕の方に向き直った。 でもあからさまに後に引いてるような顔をしてるけど。 「貴方、お嬢様に何か隠し事をしてるわね?」 「……はい」 咲夜さんの質問の内容に僕ははいと答えるしかない。 だって咲夜さんに嘘をつくことは出来ない。 それが大変なことでも、聞かれた以上答えなきゃならないんだ。 「素直に答えたわね……じゃあそれはお嬢様に知られると困ること?」 「……はい。今は……まだ」 そう答えた僕の顔は少し苦笑いでもしてたかもしれない。 だって咲夜さんはメイド長。 使用人が主に隠し事をしてるなんて許してくれるはずはない。 レミリア様に報告もきっとするだろう。 「……それはお嬢様にとって良いこと?」 「それは……わかりません。僕の自己満足で終わるかもしれませんし、そうならないかもしれません」 僕の曖昧な答えに咲夜さんはあからまさにわかるくらい大きくため息をついた。 「……お嬢様が心配してるの。早くお嬢様を安心させてあげて」 「え……?咲夜さん報告するんじゃ……」 僕の質問に咲夜さんは少し子供染みた、それでいて少女のような笑みを浮かべて笑った。 こんな顔始めて見たかもしれない……。 いつもメイド長ってイメージしかないから……。 「数日だけ待ってあげる。その代わり必ずお嬢様を喜ばしてあげて」 それだけ言うと咲夜さんは僕の横を通り過ぎて去っていこうとしてしまう。 まずい、これだけは言ってから……。 「ありがとうございます咲夜さん!!それと……僕は咲夜さんのこと怖いんじゃなくて可愛いと思いますよ!」 ってあれ?僕が叫んだ瞬間咲夜さんの姿が消えた。 時間を止めてさっさと行っちゃったのかな……さっきの聞こえてると良いけど。 「え、え、えぇ!?い、今○○私を可愛いって……~~~~~」 「出来た……うん。これならきっと……」 仕事の合間を見て図書館でパチュリー様の修行を受けながら完成させてきたコレ。 コレがあればきっとレミリア様も喜んでくれる。 「……良くもまぁこれだけのを作ったわね。あなた人間にしとくには惜しいんじゃない?」 「そんな……コレ一つ作るのにこんなに苦労しましたから」 パチュリー様の褒め言葉がなんだかくすぐったい。 あんまりこのお方は人を褒めないからなぁ……。 「ありがとうございますパチュリー様。パチュリー様のお蔭で……」 「……私にお礼は良いからレミィに早く持っていてあげなさい。小悪魔、包装を」 「はい~」 ふふ、僕にお礼を言われてパチュリー様少しだけ赤くなってますね。 相変わらずこのお方はお礼を言われることに慣れてないんですから。 「それじゃあ行ってきます」 「報告、待ってるわ」 「頑張ってくださ~い」 パチュリー様と小悪魔さんに見送られ、図書館を後にする僕。 向かうはレミリア様の所。 これを早く渡さなきゃ……。 「や、やっと来たのね○○。お嬢様が中でご立腹よ」 お嬢様の部屋の前では咲夜さんが少しだけ顔を赤くして待っていた。 あれ……?なんで咲夜さん顔赤いんだろ? 「あの……どうかしたんですか?」 「い、良いから○○は部屋に行きなさい!」 無理矢理押し切る感じで咲夜さんに部屋に押し込まれてしまった。 どうしたんだろ……まぁそれよりも今はレミリア様!? 「……何しに来た」 似合わない威圧口調まで使われて……物凄い不機嫌なようですねレミリア様。 でも……そのお顔はお似合いになりませんよ? 「すみません……無礼を覚悟で失礼します」 「えっ……ちょ○○!?」 一気に歩み寄った僕に、レミリア様は焦ったように一歩下がる。 そうそう威圧口調より、そっちの方が可愛らしいですよ。 「これをお受け取りください。僕の……傑作です」 手を取りレミリア様の小さい手に箱を置く。 どうやらレミリア様は唖然として何も言えないようだ。 「お開け頂けると光栄です」 「…………」 レミリア様は無言で箱を開けていく。 あの中に入ってるアレ……喜んで頂ければ良いけど。 「これは……」 ○○に強引に渡された箱に入っていたのは、赤いとてもとても綺麗な宝石だった。 私が見る方向を変えるたびに赤い色が少しづつ変わる不思議な石……とても綺麗な魔法の石……。 「レミリア様にお世話になってから……何もお礼をしていなかったので」 そう言って○○は優しく笑った。 その笑顔は……さっきまであった不安や苛々を全部消してくれて……。 「本当はアクセサリーに加工しようと思ったんですが……時間とか足りなくて」 心の奥から何か暖かいものが込み上げてくるようだった。 この私が……人間からのプレゼントで感動してると言うの? ……バカらしいって言い切れれば……良かったんだけどね……。 「……このために最近?」 「はい。沢山の宝石を魔法で加工して一つにするためにパチュリー様に教えてもらいながら少しづつ……」 「……そう」 もう怒る気なんか完全に無くしてた。 ……お節介な執事め。 こんな嬉しいこと……簡単にするんじゃない……。 私は嬉しいことを意識すると急に恥ずかしくなり、何も言えなくなってしまった。 ○○が嬉しそうに笑ってる所を見ると、私の顔は真っ赤なのだろう。 でも何か心地よい……そんな気分だった。 うpろだ564 ─────────────────────────────────────────────────────────── 今日こそ何もない一日を望んでる……と思いたい。 正直な所、僕こと森近霖之助に平凡な日常など皆無である。 主に毎日のように現れる略奪者の仕業なんだが……。 まぁ長い生のほとんどは長い暇潰し……今日もその暇潰しを満喫させてもらうとするか。 「香霖!今日も来てやったぜっ!」 「……毎日来てるね。暇なのかい魔理沙?」 一番の略奪者である魔理沙はほぼ毎日ここ香霖堂に現れる。 でも同時に僕は魔理沙の持ってる品をほぼ騙し取ってるから何も言えないのだが。 「何言ってるんだ。私が来ないと香霖にいつの間にかキノコが生えるじゃないか」 そう言って魔理沙は許可もしていないのに勝手に上がって行く。 いつものことだから今頃何も言わないが……僕はそんなキノコが生えるような生活をしてるかい? 「はぁ……いい加減ツケを返して欲しいんだけどね」 「だからこうやって夕飯を作りに来てやってるだろ?」 「きみも「お邪魔するわよ」……今名前を出そうとした霊夢も夕飯をたかりに来ただけにしか思えないんだが?」 次に現れた霊夢。 ツケを払わない第二号で略奪者の一人。 まぁ基本はお茶とかだから被害自体はそんなに大きなものではないのだけど。 「魔理沙も来てたの?じゃあ私も食べてくわ」 「……何がじゃあなのか良く分からないんだが?」 勿論霊夢は僕の言葉なんて気にせず魔理沙の方に言ってしまう。 いつもそうなんだが、ここが僕の店であることが分かってるんだろうか? 「香霖~?塩はどこにいったんだ?」 「塩は奥の棚だよ。この前取られたからね移動させたんだ」 ってしまった。霊夢に取られないために移動させたのに意味がないじゃないか。 はぁ……これでまた僕の家から塩が消えていくか……。 「先に言っておくけど今日は少し商談があるからあんまりうるさくしないでくれよ?」 「「商談?」」 珍しい言葉を聞いたとばかりに魔理沙と霊夢が同時に顔をこっちに向けた。 「あぁ正直この商談が上手くいかないとしばらくかなり苦しいんだ」 「霖乃助さんもそんな生活苦しいの……?」 そんな同志を見るような目で僕を見ないでくれ霊夢。 きみも苦しいのは分かっているが、同志みたいに見られると何か辛い。 「香霖に商談をするなんてどうかしてるぜ」 「魔理沙……何度も言ってるけどここは店なんだからな?」 「分かってるぜ?」 満面の笑みを浮かべながら魔理沙は相当失礼なことを言い、台所に戻っていく。 多分もう興味を失ったんだろう。 それで商談の相手って誰なの?」 どうやら霊夢はまだ興味があるみたいだな。 でもいい加減売り物のツボに座るのは止めてくれないか? 「あぁ多分そろそろ……」 とそんなことを言った途端ノックが来たな。 ここにノックをする人なんて本当に少ないからすぐに分かる。 「入ってくれて構わないよ」 そして扉が開き、そこには……。 「森近さん遅くなりましてすみません」 「いや問題ないよ。いらっしゃい」 今日の商談相手は始めての相手である○○だ。 どうやら外の世界の人間らしいけど……この妙に似合ってる執事服を見てると、妙に馴染んでいる。 「えっと……○○だっけ?レミリアの執事の」 「はい。霊夢……うん。敬意を払う必要はないって言われてますから、呼び捨てで良いですよね?」 どうやら霊夢は○○と初対面に近いみたいだ。 まぁそう言う僕もこの前始めて○○がここを訪れたのが始めて会った時だが。 「敬意を払う必要ないって……レミリアが言ったの?」 「いえレミリア様は何も。言ったのは咲夜さんです」 「咲夜の奴……まぁ良いけどね呼び捨てで」 「ご理解頂けて嬉しいですよ」 霊夢と話す○○の物腰は柔らかだがどこか人間味が薄い。 いつもこうなのかはわからないが、変わった人間であることには変わらないな。 「それでだ○○。今日の商談だが……見ての通り霊夢と魔理沙が来ていてね。二人がいてダメなら後日になるが……」 「あぁいえ構いませんよ。霊夢や魔理沙がいても僕にとって問題は特にありませんから」 僕の配慮に○○は薄っすらと笑って返してきた。 まぁ○○が良いのなら僕は別に構わないのだが……。 「○○、あなたレミリアの執事なのにお金あるの?」 「……霊夢。レミリア様はご自分の部下に何も与えないような貧困な心の持ち主ではありませんよ?」 霊夢の言葉に少し呆れたような表情の○○には先ほどより遥かに人間味がある。 どうやらレミリア関係になると感情が出てくるらしいね。 だがそれよりもだ。 「霊夢、商談をするから少し下がっててくれないか?○○との雑談になってしまう」 「あらそう。じゃ勝手に上がってお茶を飲んでるわ」 僕の言い分に珍しく簡単に乗ってくれ、霊夢は魔理沙のいる方に戻っていった。 これでやっと商談が出来る。 「とりあえず用意した椅子がある。お茶を持ってくるから座ってくれ」 「はい……失礼します」 僕が一旦お茶を持って戻ってくると、○○は座った体勢のまま動くことなく待っていた。 完璧なる従者を徹底してるってことか……。 いや実は執事になるために生まれてきたのか!? ……まぁ冗談は置いておくとして、少し徹底しているのは気になるな。 「さて商談に入ろうか。確か外から取れた貴金属……主に宝石に当たるものが欲しいんだったね?」 「はい。在庫の方はどうなってますか?」 「案外多く手に入れることが出来てね。値は少しあるが、それなりの量があるよ」 そう言いながら僕の出した袋をじっと見ている○○。 実際の年齢は良く知らないが、こう言った所を見るとまだまだ子供のような好奇心があるな。 そういう意味ではレミリアと良くお似合いなのか? 「えっと……宝石が出来るだけ欲しいんです。あんまり僕はお金を持ってない方ですけど……ってどうかしましたか?」 「い、いやなんでもないんだ……」 略奪者しかいないこの店に客が……お金をきちんと払おうとするお客がいるよ……。 おっと感動のあまり泣きそうになった。 「おーい香霖?商談まだ……って○○?」 「魔理沙、まだ商談は終わってないよ」 「香霖……?森近さんそれって……」 「あぁ僕のことだよ」 「へぇ……」 何故か○○は口の中で小さく何か呟いている。 何か……まさか何か良からぬことを考えているんじゃ!? ……まぁ魔理沙じゃあるまいし、そんなことあるわけないか。 「なんだ商談の相手は○○だったのか。香霖に商談をするなんて時間の無駄だぜ?」 「……ちょっと待ってくれ魔理沙。時間の無駄とはどういう意味だい?」 「そのまんまの意味だぜ」 「……仲が宜しいんですね」 いつものように魔理沙と話していると、○○が子供のような笑顔を見せて笑っていた。 僕が何かそんな面白いことをしただろうか。 「へ~○○の笑う顔って始めて見たかもしれないぜ」 「そうですか?僕はそれなりに笑ってるつもりですが……」 「そいつそんなに笑わないの?」 魔理沙の話しに○○も乗ってしまったか……。 霊夢も乱入してきたし、これはしばらく商談はお流れかな……まぁ良いさ。 ○○が随分と子供な顔をしてるからね。 「すみません。商談を忘れて話し込んでるなんて……」 「良いんだよ。物を買おうという意思すらない誰かさん達と比べればね」 僕の皮肉交じりの言葉にも魔理沙はどこ吹く風だし、霊夢はお茶をのんびりと飲んでる。 きみ達のことなんだけどね。 「いえでも宝石は買っていかないと……これで買えるだけの宝石をくれませんか?」 そう言って出した袋を僕は受け取っ……重!? 「こ、これはどれくらい……うわ!」 思わず僕は叫んでしまった。 物凄い量のお金がそこには入っていたのだ。 これだけあれば僕が出した宝石を全部買ってもお釣りが来るぞ!? 「一体どこでこんなに……」 「レミリア様からは一応お給料を貰ってますから……今までもらった全額ですけど?」 「全額!?それじゃ生活はどうするんだい?」 「食事は館で出ますし……別に欲しいものとかないんですよ僕」 はっきりと言い切った……。 これは実はアレか!?僕の店で買い物をしたことを口止めするための口止め料……って○○がそんなことする意味ないじゃないか。 「じゃじゃあその宝石は……」 「魔法の練習に使う分とあとは砕いて錬金してお嬢様にプレゼントしようかと」 「……正直脱帽だよ○○。きみは完璧なまでに執事なんだね」 呆れる……というかもう関心するしかなかった。 どうやら意思がないと言う心配も杞憂だったみたいだ。 「ではこれで……今日はありがとうございました。香霖さん」 「え……」 僕がまともな反応を返す前に○○は扉から急いで去っていってしまった。 今確かに香霖さんと呼んだような気がするけど……。 「香霖~終わったなら飯食おうぜ~」 「……あぁ今そっちに行こう」 まぁ……良いだろう。 今度○○が来た時にでも確認すれば良いさ。 そうして珍妙な客による多額の商談は終わった……。 結果は珍しく僕の黒字で終わるのだった。 珍しくは余計さ。 うpろだ565 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○○は私の完全なる従者。 ○○は私のもの。 ○○は私を愛して……本当に○○は私の愛してる? ……この綺麗な宝石を私のために作った○○……でもそれはただの感謝の気持ち? わからない……私が、夜の王がここまで悩まさせられるなんて……。 でもダメ……○○が成長するまで待てると思ったけど……私はもう耐えられない。 ○○……○○……。 「う……」 私は悪夢の中に目を覚ました。 悪夢の内容は最悪な気持ちながら覚えてる……。 く……この私があんな……私はこんなに弱い奴だったか? 「……くそ」 私は立ち上がり窓に目を向けた。 夜空に浮かぶ月……どうやら私の夜らしいな……。 「咲夜」 「はいお嬢様」 「身支度を整えて。少し……いや大切な用事があるわ」 「?……かしこまりました」 私の態度に咲夜は少しだけ疑問を持ったみたいだけど……関係ない。 咲夜は完璧な従者……私の命令を完璧にこなしてくれる。 今夜が勝負……私はやるしかない。 必ずあいつを……私のものに。 「……今日はレミリア様にお会い出来なかったなぁ」 月の浮かぶ闇夜、結局僕は咲夜さんに押し切られ起きるのが遅いレミリア様を待たずに部屋に入れられてしまった。 なんでも咲夜さん曰く、僕が眠そうだと咲夜さんがレミリア様に怒られるらしい。 咲夜さんにはお世話になってるし、出来れば迷惑かけたくないけど……一日一回は会いたかったなぁ。 「……はぁ」 僕はレミリア様の望むような従者になれてるだろうか? いやまだ足りない……でも少しは追いつかないと……。 僕には寿命があるんだ……時を操れる咲夜さんや、魔女であるパチュリー様。 妖怪である美鈴さんに吸血鬼のレミリア様……みんな長い寿命を持ってる。 僕だけが死ぬ……でも死ぬ前に……レミリア様の望む人間に……。 「○○」 「……え?レミリア様?」 なんでだろう?レミリア様がなんで僕の部屋の窓の所に……。 それもそんな悲しいお顔をなされて……。 「○○……起きてたみたいね」 「……はいレミリア様。すみません主の起床に立ち会わず」 「そんなの別に良い……」 レミリア様……? 僕に迫ってくるレミリア様。 そのお顔はとても苦しそうで……僕は何も出来なかった。 そしてレミリア様は僕の顔の目の前まで来ていた。 「○○……あなたは私のもの。だから受け入れなさい」 「!?」 レミリア様……? なんでレミリア様は僕の首を……噛んで……。 あぁそっか……これは吸血鬼であるレミリア様が眷属を……。 「……○○」 私はきっと最低なことをしただろう。 ○○は私が何をしても抵抗しない……それがわかってて私はこんな真似をしたんだから。 一瞬驚いた顔をしていたけど、○○の顔は何故か穏やかだった。 なんで……あなたは血を吸われたのよ? 「……レミリア様」 「○○!?」 ○○の意識はすぐに戻ったらしく、急に私を抱きしめてきた。 その力は強く……でもとても安心出来るものだ。 「ありがとうございますレミリア様」 「あり……がとう?」 私は○○の言葉がしばらく理解できなかった。 私は無理矢理○○を眷属にしたのに……ありがとう? 「なんで……」 「僕は嬉しいんです……愛するレミリア様の眷属になれて」 「あ……」 ○○のその言葉で私の力はフッと抜けていった。 そっか……始めから何も心配する必要なんてなかったたんだ……。 ○○は始めから私を愛してた……そんなわかりきったことを疑う必要なんて……なかったんだ。 「……ごめん……なさい○○」 急に自分が恥ずかしくなった私は、恥も何もかも捨てて○○に謝った。 ちゃんと私を愛してくれていた○○に……。 「……謝る必要なんてありませんよレミリア様。それに……泣かないでください。僕が悲しくなりますよ」 ぎゅっと私が落ち着くように○○は私を抱きしめてくれる。 それがなんだか凄く嬉しくて……始めて私は他人の胸の中で涙を流して泣いた……。 「○○……良い?あなたは私のもの……それは間違いない」 「はいレミリア様」 泣き止んだレミリア様はまだ残る涙を拭きながらそんなことを言ってきた。 どうやら僕の体は凄く吸血鬼に馴染むみたいで……レミリア様に噛まれた傷は早くも再生を始めていた。 しかし吸血鬼になってもあんまり感覚は変わらないんだなぁ……。 「でも同時に……私は○○のもの。私を愛する限り……私をものに出来るのよ」 「そんな……僕がレミリア様をものにするなんて」 「……あなただけなんだから。私を泣かせたあなたが……私を唯一ものに出来る」 そう言ってレミリア様はもう一度僕に抱きついてきた。 僕は少し驚いていたけど……笑って抱きしめ返してあげた。 「……○○。私の眷属になったんだから……私に頼るだけではなく頼らせなさい」 「はい……レミリア様」 「私を愛して……一番。ずっと思いっきり」 どこか言い聞かせるようなレミリア様の言葉。 でもその全てが僕にとって嬉しくて……思わずこう口にしていた。 「もちろんです……ずっとあなたを愛しますよ……レミリア……」 うpろだ595 ─────────────────────────────────────────────────────────── あれ、レミリア様。お一人でお酒を飲むなどめずらしい 「ええ、咲夜は 952の相手をすると言って席を外しているわ。相変わらず素直じゃない子なんだから。」 そうなんですか、同僚として冥福を祈ってます。それでは私はこれで 「あら、どこに行くのかしら。あなたは私の酒の相手をするのよ。咲夜がいなくて物足りなかったし。」 え゙!私が酒にめっぽう弱いことはレミリア様もご存じでしょう。 「だからよ。あなた私の眷属のくせに酒に弱いんですもの、スキマの式や白玉楼の料理人を見習いなさい。私が馬鹿にされてしまうわ、それに…。」 それに? 「それに私だって愛しい人と長い時間晩酌したいとおもったっていいじゃない…。」 む、敬愛する主人にそこまで言わせて断るのは使用人の、もとい恋人の名折れだな。わかったよ、今宵は朝まで付き合うさ。 7スレ目 955 (952は咲夜4先頭にあります) ─────────────────────────────────────────────────────────── コンコン ○「はーい、どなたですか?」 レ「私だけど少しいいかしら?」 朝食を食べて一心地ついている所に俺の恋人であるレミリアが突然やってきた ○「レミリア?お前が朝から来るのって珍しいな、しかも咲夜さんは一緒じゃないのか?」 そう、彼女は闇の住人である吸血鬼、本来なら夜に活動し、朝は眠っている たまに昼間で歩く時もあるがそれでも朝起きていることはほとんどない レ「ちょっと咲夜には……他の皆には内緒の話がしたくて」 ○「ふーん、そういやなんか顔色悪いな、大丈夫か?」 レ「え、ええ、ありがとう心配してくれて」 ……なにか変だ、妙だ、おかしい、咲夜さんを連れず朝から家に来ることも十分変で妙でおかしいが レミリアが素直に感謝の言葉を言うなんて絶対なにかある 顔色が悪いことに何か関係しているのか? ○「なあレミリア、単刀直入に聞こう お前何か俺に隠し事してないか?」 レ「……隠して、ないわ」 ○「態度でばればれだ、まあ俺は頼りないし、弱いし、お前の支えになれてないし 畜生、自分で言って悲しくなってきた……」 レ「そんなことないわ、貴方がいてくれるだけで私は……」 そういうとレミリアは下を向いてしまった なにか変だと思ってたが今日のレミリアは妙にしおらしいのだ いつもだったらしっかりしろだろの言うのに今日はそれがない そんなレミリアの様子を見ながら俺はレミリアにもう一度何があったのか聞いてみた ○「なら、隠し事せずに喋ってくれるか?」 レ「その……子供が出来たみたい」 ○「……………why?」 レ「だから子供ができたのよ!当たり前だけど貴方の子供が!」 ○「そ、そうか子供か、だから顔色悪かったんだな で、他に知っている人いるのか?」 俺は努めて冷静に聞き返した、今俺まで混乱してはレミリアが不安がる レ「……永遠亭の薬師ぐらいしか知らないわ、今日吐いて もしかしてって思って何も言わず館を出てきたから ○「そうか……で勿論産むんだろ?」 レ「産んでも、いいの?私は吸血鬼なのよ」 ○「わざわざ聞くこうなことでもないだろう、だって俺はレミリアを愛しているんだからな」 レ「○○……ありがとう」 8スレ目 86 ─────────────────────────────────────────────────────────── すっかり日が暮れた川原に一人の男が座り込んでいた 先ほどからため息しか吐いてないところから見るに落ち込んでいるようだった 「はぁ・・・」 またため息を一つ 「知ってる?ため息を吐く度に幸せが逃げていくのよ?」 「!?」 そこには一人の少女が、いた 「お嬢ちゃん・・・じゃなね、同類かい?」 「私や妹以外の吸血鬼なんて久しぶりに見たわ」 「なり立てでね、ちょっと腐ってる部位もあるが気にせんでくれ」 男の身体からは僅かだが腐敗臭がすることから出来損ないである事が解かる 「何故そんなに落ち込んでいるのか・・・話してくれる?」 「えっと・・・好きな女がいたんだよ、でも吸血鬼だって知ったら逃げちまった、簡単に言うとこんな所」 「ふーん人間に恋したの?」 「ああ、俺だって最近まで人間だったんだ、人間に恋しても可笑しくはないだろ?」 自嘲気味に笑って見せるが少女はただ聞いている 「初めは殺そうと思ったわ、でも今は少し興味がわいた」 「ん?何の話だ?」 「私の館に来なさい、こき使っていや、面倒見てあげるわ」 少女は立ち上がって男に向って手を差し伸べた 「こき使うとか聞こえたんだけど気のせいかな?」 「来るのか来ないのか、此処で死ぬか、今決めなさい」 偉そうな少女は紅い眼を輝かせて選択肢のない選択肢をいいはなった 「・・・俺の名前は○○ってんだ、まぁ・・・よろしく」 偉そうな少女の手を握り返し立ち上がった、手は暖かかった 「私はレミリア、レミリア・スカーレットよ、レミリア様と呼びなさい」 ○○はこの先白黒や赤白やパッドやら引きこもりやらに大変な目に合わされるとは夢にも思わないのであった 8スレ目 162 ─────────────────────────────────────────────────────────── ○「っつ・・・ここは、どこだ?」 ○「それになんで鎖が・・・」 ガチャッ レ「気分はどう?○○」 ○「レミリア? これはお前がやったのか?」 レ「ええ、そうよ」 ○「・・・なんのつもりだ?」 レ「貴方を私の物にする為によ さしずめその鎖は私からの婚約指輪といった所かしら」 ○「な!?ふざけんな!勝手にこんな事しといて何言ってやがる!」 レ「今更何を言ったって遅いわよ、だって○○はもう吸血鬼になってるもの」 ○「くっ!?」 チャリガシャガチャ レ「その鎖、銀で出来てるは いくら吸血鬼の力とはいえ新生(ノウルサリート)したばかりの○○じゃ絶対に千切れない」 ○「レミリアぁーー!!!」 レ「外はまだ○○と暮らすにはうるさいから50年もしたらちゃんと出してあげる それに毎日ここに来るから大丈夫よ」 ○「……………狂ってるぞ」 レ「○○が私を狂わせたのよ もう、暴れるから血が出てるじゃない、止血、しないと ん……ふぅ、ん…」 クチュペチャ レ「やっぱり○○の血はおいしいわね 貴方の血も魂も体も心も全部私のもの その代わり、私の全ても○○に捧げるわ」 ○「レミリア……」 レ「ふふふふふ、また来るわ○○」 ギィーガチャ 8スレ目 214 ─────────────────────────────────────────────────────────── ゴクゴク レミリア「んぁ……これで貴方は私のもの、髪も血も身体も魂すらも私のもの 誰にも渡さない、誰にも見せたくない、フランにも咲夜にもパチェにも美鈴にも この世界に住むもの全てに貴方を見せたくない、貴方を見ていいのは私だけ そう、私だけが貴方の全てを見れる」 8スレ目 320 ─────────────────────────────────────────────────────────── レ「今日は何の日か分かる?○○」 ○「何の日って、十三日の金曜日だろ?」 レ「そうよ、すなわち悪魔の日でもあるわ」 ○「何そのこじ付け、そもそも悪魔じゃなくキリスト教徒にとって忌むべき日じゃね?」 レ「吸血鬼である私にとってキリスト教徒は敵よ! つまり将来私の夫で吸血鬼になる○○にとっても敵ということになるわ!」 ○「ふーん…………はぁ!? お前今なんつった!?」 レ「だからキリスト教徒は敵」 ○「その後ろ!俺の耳が確かなら夫になって吸血鬼になるって聞こえたんだけど……」 レ「確かに言ったわ、それが何か?」 ○「いつの間に決めやがったコン畜生」 レ「そんなの最初からよ」 ○「……は?」 レ「○○に初めて会ったときに決めたのよ『ああ、この人間は私の夫になるわね』って 漠然とした感じだけどね」 ○「その…なんだ、『視』えたってことか?」 レ「違うわよ、単なる私の一目ぼれ それで?返答はどうなの?」 ○「へ、返答って?」 レ「私は告白したわよ、だからその返答が聞きたいわ まあどう答えようが○○の運命はもう私の手の中だけどね」 ○「なんじゃそりゃぁーーーーー!!??」 8スレ目 474 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ねぇ○○、私が貴方を本物にしてあげようか?」 いきなり呼ばれたかと思うと、いきなりわけワカメ 「本物・・・?」 「本物の吸血鬼にって事よ!なりたくないの!?」 ああ、そういうことですか、てっきり本物の男にしてくれるのかと 「・・・今はいいです、JOJOになって行こうと思います」 「せっかく役に立つと思って拾った眷族が!腐った死体で!再生も出来ない出来損ないだからこんな事を言ってるのよっ!!」 あー・・・言い返せないなぁ、腐敗はもうないけど、再生も出来ないし能力もそのままだし これじゃ日の光に弱い人間だもんなぁ、再生は出来ないけど接合治癒は出来るよ!? 「ははは・・・返す言葉もありません」 「・・・もういいわ、下がりなさい」 「はい、失礼しました」 ナイーブな俺は傷ついて家出しようと玄関を開けようと・・・灰になりかけて断念 「本物の吸血鬼か、面倒な」 「そんな貴方に!」 「うぉう!??パチュリー様!?」 「おっす!おらパチュリー!・・・ごほん、そんなに落ち込んでどうしたの?」 す、すべったーしかも自分でスルーですか 「え、ええかくかくしかじか」 「ふーん、レミィも酷いのね、こんな可愛い子を」 いきなり首筋をペロッと舐められた 「うひゃぁぁ!」 「うふふ、前に言ったでしょ?私の僕になりたかったらいつでも来なさいって」 これは・・・危険なかほりがする →逃げる 逃走 パチュリー様!もっと踏んでください!! 「失礼しましたっ!」 とりあえず逃げた 逃げた先、偶然か必然か、レミリア様の部屋の前だった しかも丁度レミリア様が出てきたし 「tgyふじこl;」 「何あわててるのよ、そんなに私が怖いかしら?」 しまった怒らせたorz 「まったく、私も貴方が憎くて説教してるわけじゃ無いのよ?貴方の事が大好きだからもっとよくなってもらおうと」 「だ、大すk!?そ、それはラヴですか!?ライクですか!?」 ドグォ!!痛恨の一撃、○○は心が砕けた、目の前が暗くなった 「そんな事・・・言わせないでよバカ」 頬を紅く染めて、ちょっと拗ね気味に・・・最高だ、可愛すぎるぜご主人さ、ま あーあ意識が戻ったらへんじをしなきゃー ○○が残った意識で考えたのは「結婚式は教会じゃできない」だったらしい 8スレ目 702 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「来ないで。」 レミリアが叫んだ。 「あなたが来てなんになるというの。」 冷徹な事実。僕はあまりにも弱い。 「敵は強大、勝ち目など無い。あなたは今すぐ逃げて。」 「君を置いて逃げられるものか。」 そう言ったとたん、レミリアの表情が険しくなる。 「何を勘違いしてるのかしら? 」 夜の王が持つ威圧はあらゆる物の畏怖を呼び起こす。 「まさか、愛してるなどというのではないでしょうね。もしそんな感情を抱いてるとすれば それはまやかしよ。」 「人と妖怪の違いなど僕は気にしない。」 「そんな事ではないわ。私は吸血鬼。たとえ死しても産土、貴方達の言う所の邪な土の元で 、吸血鬼となった時に定められた定常状態へと回帰するだけ。そもそも生き物じゃない。」 「それでも、回帰するのは定常状態へ、だ。」 必死で訴える。 「僕の愛する君は、君の記憶は、君が死ねば失われる。それは生きてるという事にはならないか。」 レミリアはうつむいている。 「二人で逃げよう。紅魔館は、落ちたんだ」 8スレ目 908 ───────────────────────────────────────────────────────────
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. ○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 【レミリア】 ※最新のステ:- ※最新の変更:- ○━・━・━・━・━・━・━・━□━・━・━・━…━・━・━・━☆━・━・━・━・━・━・━・━◇ 初登場:? 取りあえず作ってみましたw この溢れでるカリスマ・・・絶対に強キャラに違いない
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「○○、何してるの?」 珍しく○○の部屋に遊びに来ていたレミリアが、○○が耳に細い棒のようなものを入れているのを不思議そうに見ていた。 「ああ、これですか? 耳かきですよ。里で見付けたんです」 「耳かき?」 「耳掃除するとき使うんです。耳は垢がたまりやすいですから」 懐紙に耳垢をまとめて捨てながら、○○は首を傾げる。 「レミリアさんのもしましょうか?」 「え?」 「人にやってもらうと綺麗に掃除できるんですよ。それに、興味あるんでしょう?」 ベッドに座って、○○は膝をポンポンと叩いた。 「そ、そんなことはないけど……そこまで言うならさせてあげるわ」 羽だけを楽しそうにはためかせながら、レミリアが膝に頭を乗せる。落ち着く体勢になるのを待って、○○が手を伸ばした。 「では失礼して」 「……ひゃうっ!?」 声に驚いて、○○は耳に触れた手を離す。 「びっくりした……」 「それは僕のセリフですよ……続けて大丈夫ですか?」 どうもくすぐったいようだ。下手に動かれると危ない気がする。 「だ、大丈夫よ。続けなさい」 「わかりました……でも、危ないから動かないでくださいね。手元が狂うと怪我しますし」 「大丈夫よ、すぐに治るのはわかってるでしょう?」 「それは身をもって。でもそういう問題じゃないです。レミリアさんを傷付けるのが嫌なんですから」 「……わかったわ」 少しの空白の後、レミリアはそう頷いた。そういうことをさらりと言うなとか何とか聞こえた気がしたが、よく聞き取れなかったのであえて訊かない。 とはいえ、耳に触れるとビクリと震えるため、危なくて仕方がない。 「耳かき、中に入れられないですよ」 「し、仕方がないじゃない」 「うーん、では失礼します」 ○○は片手でレミリアの肩を押さえ付けた。これなら安定する。 「さ、これなら大丈夫でしょう。続けますよー」 「……何だか楽しそうね」 さてどうしたものか。 ようやく耳掃除をしながら、○○は困惑した表情を浮かべていた。 無事に始められたまでは良かったのだが―― 「ん……ひゃ……」 くすぐったいのが我慢できないのか、レミリアが微かに震えながら、小さく声をあげているのだった。 身をよじるのは何とか身体を押さえて止めてはいるが、何だかこのままではいろいろな意味でまずい気がする。 「痛くないですか?」 「それは、大丈夫……ん」 他愛も無い会話でもしていないと、何だか自分がやましいことでもしているかのような錯覚に陥ってしまう。 いや、会話していてもどうかという話なのだが。 「あ」 少し陰になって見えないので、身体を押さえていた手を離して耳に触れる。 「ん……っ!」 「ちょっとじっとしていてくださいねー」 びく、と身体が震えるのが大きくなったが、大人しくじっとしている。丁度いいので、このまま掃除してしまおう。 誰かの耳掃除というのはそう経験はなかったが、なかなか面白いものなのだ。 「いっ……」 「すみません、ちょっと我慢しててください」 「う、ん……んん」 「はい、取れましたー」 懐紙に取って、ふむ、と○○は呟く。そろそろこちらはいいかもしれない。 「ん……終わり?」 「こちら側は終わりです。次は反対側をしましょうか」 「ま、まだやるの?」 少し息が荒いまま紅い顔を向けたレミリアに、○○は笑顔を向ける。 「片方だけだと気持ち悪いでしょう?」 「……まあ、そうだけど」 「だから、はい、反対側」 「…………楽しんでるわね?」 「いえいえそんなことは」 まったく誤魔化す気の無い返答に、レミリアは微かに涙目になった目で上目遣いに睨みながら、一言だけ言った。 「後で覚えてなさいよ……」 逆側の耳に触れるときにも身体をびくと震わせたが、諦めたのか慣れたのか、時折震えながらもレミリアは○○の成すがままになっている。 (……とか言うとものすごく変なことしてるみたいだけど) そう心に思いながら、掃除を始める。 「ん……ん」 「痛かったら痛いって言ってくださいね」 「……うん」 こちらに顔を向けているが表情は見えない。それでも何となく可愛らしくて、○○は顔を綻ばせた。 「……何、ん、笑ってるのよ」 「いや、可愛いなと思いまして」 「……そういうこと、さらりと言わない」 さらに紅くなったのだろう顔を○○に擦り寄るように伏せて、レミリアは○○の服を握った。 「こっちはくすぐったいんだから、早く終らせなさい」 「はいはい」 大人しいうちに、○○は手早く掃除を続けていく。時折漏れる声を少しばかり楽しみながら。 「んー、何だかすっきりした気がするわ」 「でしょう? 気持ちいいものですよ、耳掃除って」 「ちょっとくすぐったかったけどね」 くすくすと笑いながら、だが機嫌は悪くないようで、○○は安堵する。 「またしてあげましょうか?」 「そうね、また気が向いたら」 膝の上で横になったまま、レミリアは○○を見上げた。 「どうしてあんなに楽しそうだったの?」 「いやだって可愛かったですし。それに」 「ひゃ!?」 「耳が敏感だなんて知りませんでしたしね。新たな発見です」 レミリアの耳を、つっ、と指でなぞって、○○は楽しそうに笑う。 「……っ……」 びくっとなった後、レミリアは○○を睨み上げ、そして、えいとばかりに手を跳ね除けて起き上がった。 「貴方が横になりなさい」 「はい?」 「私が耳掃除するから、貴方が横になるの」 「でも、僕さっきまでやってましたが……」 「いいから! やられっぱなしは気に喰わないの。さっさと横になりなさい」 言われるままされるがままに、○○はレミリアの膝の上に頭を乗せる。さっきとは逆の体勢だ。 「……レミリアさん、やったことは?」 「ないわよ。でも今されたばかりだからわかるわ」 「……では、お願いします」 一抹の不安を抱えながら、○○はレミリアが気が済むまで大人しくしていることにした。 後日、図書館にて。修行の休憩中の会話。 「……それで、どうだったの?」 「は? 何がですか?」 「耳掃除。レミィにしてもらってたって聞いたけど。レミィが誰かに何かするなんて珍しいから」 「……あのときほど、自分が吸血鬼になってよかったと思ったことはありませんでしたね……まあ、悪くなかったというかむしろ良くはあったんですが」 「……そう。仲が良さそうで何よりね」 うpろだ1020 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「○○、今日も後でするわよ」 「いいですけど、随分楽しそうですねえ」 「楽しいもの。慣れてきたしね」 「それは僥幸。もう血を見るのは勘弁ですからね?」 「し、仕方ないじゃない、初めてしたんだから」 「……会話だけだと、かなり妖しいこと言ってるわよ、二人とも」 呆れた声で、パチュリーが話に加わった。午後の紅茶の時間、紅魔館のティールームのいつもの光景である。 「ん? パチェにも耳掃除してあげようか?」 「遠慮しておくわ。危険には近付かない主義だもの」 「むー、そんなことないわよ。ねえ、○○?」 「向上の後は見られる、とだけは」 「それはどういうことよ?」 問いには答えず、○○は紅茶をすすった。 「○○さんの部屋からたまに悲鳴が聞こえてたとか聞いたけど」 「最近はわりと大丈夫ですよ。鼓膜の被害もなくなりましたし」 「そこまで酷くはないわよ」 「最初は今までに体験したことのない恐怖を味わいましたけどね?」 楽しそうにからかう○○を、レミリアが軽く睨んだ。 「随分と意地悪を言うのね」 「いえいえそんなことは」 「じゃれあうのもいいけど、私達がいるのも忘れないようにね?」 レミリアがいつの間にやら○○の膝の上に座を移しているのを見て、パチュリーがさらに呆れながら咲夜と頷きを交わした。 「妖精メイド達の噂になっていましたよ。何やら声が聞こえてきていたと。そのメイド達は当然嗜めましたが」 「あら、別に後ろ暗いことをしてるわけじゃないわよ?」 くすくすとレミリアは笑う。 「妖精メイド達にも勧めたらどうかしら」 「今以上に仕事をしなくなりますよ?」 「んー、確かに楽しいものねえ」 「そんなに頻繁にやるものでもないはずなんですけどね」 どこか呆れたような微苦笑で○○が相槌を入れた。 「レミィが楽しんでいるんだからいいんじゃないかしら。 それに、レミィがそんなに楽しそうにしてることにも興味はあるわ」 「あ、やっぱりパチェもやる?」 「レミィにされるのは怖いから、するなら○○さんにしてもらおうかしら」 「それは駄目。○○がしていいのは私だけだもの」 「はいはい」 呆れたような微笑みでパチュリーは親友の言葉に頷いた。 「……レミリアさんは、この前咲夜さんにもしてもらってませんでした?」 「私はいいの」 「じゃあ咲夜に」 「かしこまりました」 「むー、私は駄目なわけ?」 「○○さんに太鼓判押されるようになってからにして頂戴」 そんなこんなで、紅魔館はひそやかな耳掃除ブームになっていたのだった。 そして事の発端達は―― 「○○ー」 「はいはい」 呼ばれて、○○はベッドに腰掛けているレミリアの膝に頭を乗せた。 本来なら喜ぶべき状況であるはずなのだが、どうも反射的に身構えてしまう。身構えたところでガード不可だが。 「そんなに警戒しなくてもいいじゃない」 「いや、反射で」 「大丈夫よ、今日は怪我させないから」 羽がパタパタと動いていて、機嫌がいいのがよくわかる。 「それでは、お願いします」 ○○は観念することにした。というか、それ以外そもそも選択肢は残されていなかったが。 ――が、意外に上達していたらしい。 「あー、上手になりましたね」 「気持ちいい?」 「そうですねー。気持ちいいです」 痒いところに手が届く、というのか、それとも以前に慣れてしまっていたからそう思うのか。 ともかく、怪我もなく順調である。それが当然の姿であるとも思うが。 「私も、こういうのが気持ちいいってわかったから」 「はい」 「○○も気持ちいいといいな、くらいは思ってるんだから」 「ありがとうございます」 素直に礼を言って、とりあえず身を任せることにする。うん、思わずうとうとしてしまいそうなほど気持ちが良い。 「……寝ると危ないわよ?」 「ん、ああ、すみません」 「それで怪我しても私の所為じゃないからね」 「はい、ごめんなさい」 そう会話しながら両耳の掃除を終え、○○は起き上がって照れくさそうに笑った。 「いや、すみません、気持ちよくてつい」 「それは嬉しいけど」 言いながら、レミリアは勝手に○○の膝の上に横になった。 「ふふ、でもようやく一矢報いた気分だわ」 「報いる、って、耳掃除は勝負じゃないですよ」 「でも……ん、だって、私ばかりだったもの」 耳に触れられるとくすぐったさそうにしながら、レミリアはくすくす微笑う。 「いつも○○には痛い思いさせてたみたいだし……ん」 「そんなに気にしなくても良いのに」 「それは嫌なの」 甘えたような拗ねた言葉が可愛らしい。口に出すと怒られるので声にはしないが。 「んー……でも、○○にやってもらうのが気持ち良いわね」 「そうですか?」 「ええ、咲夜にもしてもらったのも気持ち良かったけれど、やっぱり○○が良いわ」 「光栄です。はい、反対側」 何と応じたものかと悩みながら、とりあえずそう返す。 「ん……でも、慣れない、わね」 「どうしました?」 「くすぐったいのよ、まだ。そろそろ慣れるかなって思ってる、のに。○○に触られるのが、くすぐったくて」 確かに耳に触れると、まだびくりとしたり、目をぎゅっと閉じたりしている。 「むしろ、何だか、ん、どんどんくすぐったくなってきてる、気も、するのよね」 「……あまり喋ってると危ないですよ」 その発言はいろいろヤバいと思いながら、常識的なことだけを口にする。 「あら、どうして?」 「わかってて言ってませんか?」 悪戯っぽい声を出してきたので、一時中断して耳をなぞって仕返しをすることにした。 「……んっ、だから、くすぐったいってば」 「変なこと言うからです」 「……随分意地悪になったわね」 「レミリアさんの扱いは慣れてきたつもりですが」 「…………貴方こそ、わかってて言ってるでしょう?」 「いえいえそんなことは」 しれっと白々しい声を出してみたが、一瞬だけかなり強く頬を引っ張られ、相当痛い思いをすることになった。 「ところで、どうして僕は誰かにしちゃ駄目なんですか?」 「当たり前じゃないの、○○がしていいのは私だけ、○○にしていいのも、ね」 ○○の膝の上に座って、半ば振り返りながらレミリアは言う。 「○○は私のものだから。例えパチェや咲夜でも駄目」 「……それは、もしかして、妬いてくれてたりします?」 「煩い」 ぷい、と顔を背けてしまうが、少し耳が紅くなっている様子が見えた。思わず、頬が緩む。 「何、にやにやしてるのよ」 「いや、可愛いなあって」 「だから煩い」 レミリアは怒ったように言って、○○の方に向き直った。 「あまり減らず口を叩くなら……」 「……っ」 急に口唇を塞がれて、○○は驚く。口唇が離れる頃には、レミリアは○○の上で楽しげな笑みを浮かべていた。 「塞ぐわよ、こうやって」 「……もう、やってるじゃないですか」 「私が主だ、っていうこと忘れてるみたいだから。しっかり教えないと、ね」 何だか理不尽な気がするが、それでも○○は両手を挙げた。そもそも最愛の人に勝てるわけが無い。 「好きにしてください」 「よろしい」 「ですが、後ろ暗いことはしないんじゃなかったんですか?」 「あら、何も後ろ暗いことなんかないわよ」 恋人同士なんだから、と言って、レミリアはもう一度○○に口付けた。 うpろだ1061 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「ふぃ~、生き返るぜ~」 守矢神社の方々が運営している温泉に入りながら俺はそう独り言をいう。 文々。新聞にも載っていたがここの一番の目玉である日替わり露天風呂。 天然温泉であるにもかかわらず日毎に産出地を変えている。しかもその管理は諏訪子様がしているらしい。 諏訪子様が神であることを改めて感じさせられる。ちなみに今日は群馬の老神温泉らしい。 ちゃぽん ふむ、誰か入ってきたらしい。かなりの湯気でぼんやりとした人影しか見えないが邪魔になるといけない。 俺は真ん中でぷかぷかと浮かぶのをやめると端の方に移動した。 ゆっくりと進んでくるぼーっと見ているとそこに一陣の風が吹き―― 一糸纏わぬレミリアがそこにいた。 「れれれれっ、れみりゃっ!?」 「なによ、その言い方。私はそんな変な名前じゃないわよ」 ざぶざぶと水面を掻き分けてこっちに近づいてくる。 「ちょっ!? なんでこっち近づいてくるのっ!? こんなに広いんだから他の場所に行った方がいいかと!」 「こんだけ広いのに○○しかいないから側にいくのよ」 「さいですか。でも吸血鬼が温泉入って大丈夫なの?」 「流水じゃないから別になんのは問題ないわ」 「あとちゃんとタオルで隠してください。胸とかあそことか」 「あら、私は○○に見られても別にかまわないわ」 そのまま俺の横にちょこんとレミリアは腰掛けてしまった。 うう、目のやり場に困る。澄ました横顔、なだらかな胸丘や、まだ産毛も「そこまでよ!」おおぅパッチェさんが。自重せねば。 「ふふっ、カチカチね」 「どこみてるんですかぁっ!? それに絶対キャラ間違ってると思います!!」 「私は○○の態度を見ていったのだけれど? ○○はいったいどこだと思っていたのかしら?」 「うう、いいように弄ばれている気が……」 と、俺はある物を持ってきていたことを思い出した。 「レミリア、ちょっと待っててくれ」 そう言い残して俺は風呂の縁に置いてあった桶を持ちレミリアの所に戻った。 「早苗に少しだけならってことで許可してもらったんだ。一緒にどうだい?」 「へぇ、桃のリキュールね。それじゃお言葉に甘えようかしら」 「あ、でもグラスが一つしかないや」 「それでもかまわないわ」 「それじゃお先にどうぞ」 「ええ、いただくわ」 氷でキンキンに冷やしたリキュールをグラスにトクトクと注ぎ、レミリアはそれをとても上品に飲み干した。 「ふぅ、すごく濃厚な桃の味なのに後味はスッキリ。あなたにしては中々の物を見つけたわね」 「お褒めいただき、光栄でございます。お嬢様」 「ふふっ、やめて。○○にそんな口調で喋られるとなんだかこそばゆいわ」 「うわっ、ひどいな」 「じゃ、今度は私が注いであげる」 「ああ、ありがとう。――っとと。それじゃいただきます」 「――うん。たしかにおいしい」 交互に酒を注ぎながら二人きりの酒宴を楽しみながらふと空を見上げると綺麗な紅い月が真上に見えた。 「どうしたのよ? 急に上を見上げて」 「いや、今日は月が綺麗だなってさ。そしてうまい酒にとっておきの美少女がいる。これ以上の贅沢はないかなって思っていただけ」 「○○どうしたのよ。今日は変なことばっかり言って。もしかして酔っ払ってる?」 「かもね」 横に視線を向けるとくすくすと笑うレミリアがいた。 普段のどこか嘲笑が混じった笑みとは違い、外見に相応しい少女のように笑うレミリアはとても魅力的に映った。 「なに? じっと私の顔を見つめて? なにかついてる?」 「いや。レミリアってそうやって笑うとすごくかわいいなって見とれてた」 「なっ!? ばっ、は、恥ずかしいセリフ禁止っ!!」 「あいたっ」 ゆでだこみたいに顔を真っ赤にしたレミリアに頭をはたかれた。 そしてそっぽを向いて何かぶつぶつ言い出した。 「まったくこいつは……(ぶつぶつ)わたしの気持ちも知らないで……(ぶつぶつ)」 断片的に何か聞こえてくるが、聞かないのが紳士であろう。 他に視線を移しているとまた誰かがやってきたらしい。カラカラと戸を開ける音がした。 「お嬢様、そろそろお上がりになられた方が……なぜ○○がここにいるのかしら?」 うひゃあ……今この状況で一番会いたくないお方がいらっしゃいました。 めちゃくちゃドス黒いオーラが漂ってきます。 「いいのよ咲夜。○○が先に入っていたんだから。それじゃ私は先に上がるわね」 「ちょっと、お嬢様。お体くらい隠してください」 どこも隠そうとしないレミリアにバスタオルを巻く咲夜さん。この手際のよさはさすがメイド長。 などと下らないことを考えているとレミリアがこっちを見ていた。 「今日は楽しかったわ。今度はフランも連れてくるからそのときは3人一緒に入りましょ。約束ね」 「あ、ああ……」 そう言ってレミリアは微笑んだ。その姿はまるで月光に照らされた花のように美しかった。 レミリアが出て行った後も暫く惚けたまま動けなくなっていた。 「まずい……当てられた……」 うーん、これものぼせた部類に入るんだろうか? あの笑顔が焼きついて今夜は眠れそうにないや…… うpろだ1030 ─────────────────────────────────────────────────────────── 7年ほど勤めいていたホテルを退職した。 退職した理由だが、俺が研修した新人があろうことかパーティーの配膳中、主賓に料理をこぼしてしまった。 あわてて謝罪と処理をし、なんとかその場は納め事なきを得た。 そして後日、もう一度フロア長であった俺と上司とで謝罪にいった。 先方はその時の新人に責任を取らせろ。と行ったが、研修したのは俺であり、配置を考えたのも俺だった。 結果として俺は責任を取って退職する事にした。 長年勤めた職場で未練もある、だが筋は通しておきたかったし、事を円満に収める為には誰かが退職しなければならないような剣幕だったので俺が退職する事にした。 高校を出た後、実家の旅館に嫌気が差し、次男に後を任せて勘当同然で飛び出しサービスの道に進み、今の職場に就職し、とにかくがむしゃらに勤めてきた。 そのかいあって功績は認められ、フロア長にもなった。日々忙しい中でも仕事の時間は実に充実し、これからも更に頑張ろうとしていた所での退職だった。 職場の上司や部下に挨拶を済ませ、荷物をまとめて外に出た。 いつもは従業員用の出入り口から入るのでホテルの外観をあまり見なかったが、改めて眺めてみるとずいぶんと大きく感じた。 見ていると涙腺が緩むのを感じたので、俺は足早に慣れ親しんだ職場を去った。 帰路、長い間張り詰めてきた糸がきれたかのように何もやる気が起きず、かといって家に向う気も起きず、とにかくどこか遠い所へ行きたかった。 何も考えずに電車に乗り、降り、また乗る。 そうこうしているうちに夕方になり、駅の看板を見るとどうやら岩手まで辿りついていた。 岩手といえば幼少の頃、岩手にある叔父の家によく兄弟で遊びに行っていた事を思い出した。 今ではすっかり疎遠になってしまったが、ここまで来たのなら久々に叔父の家に行ってみようと思った。 叔父に話してみれば今のこの気分も少しは晴れるかもしれない。そう考えると足取りも少し軽くなった。 なんとかバス停の名前だけは憶えていたので、そこまでバスに乗って行く事にした。 町外れのバスを降りると、辺りはすっかり暗くなり、空は雲のおかげで月も出ていないが、初秋の心地よい風と虫の声に包まれた。 深呼吸すると都会とは違う清々しい空気が体内に送り込まれ、退職してから初めてすがすがしい気分になった。 そして、幼少の記憶を手繰り寄せるように道を歩んでいった。 ・・・が、見事に道に迷った。 途中で分かれ道を間違えたのだろうか?一時間ほど歩いて何も無いというのは、やはり道を間違えたのかもしれない。 だが、いざとなったら一晩ぐらい野宿しても死にはしないだろう、という確証もあった。 どうせ昼になれば見晴らしは良くなる。 そのまましばらく歩いて行くと、急に足に感触があり、その場で後ろ向きに転んだ。 一瞬何が起こったのか理解できなかったが、少なくとも頭はうたずに済んだ事はわかった。 何か変なものでも踏んだのだろうか・・・。倒れた時に背中を打ったらしく、少々痛みを感じたが、起き上がって足元を見回した。 見回したが、何もそれらしいものは発見できなかった。 辺りは溢れんばかりの月光に照られているので、それらしいものがあればすぐにわかるはずだが・・・。 ・・・そういえば月なんて出ていただろうか。 少なくとも、俺がバスを降りた時には出ていなかった筈だ。だが、今は真っ青な月により、辺りは照らされていた。 気がつけば辺りの様子も先ほどまでとは何かが違う事にも気づいた。 さっきまでは周囲で虫の鳴き声しかしなかったが、今は時折犬だか何か良くわからない動物の鳴き声が聞こえてきて気味が悪い。 明らかにおかしい。 道路はいつのまにかアスファルトですらなくなっていた。 いくら幼少の頃の記憶を辿っても、こんな所は思い出せない。 俺は迷うことなく元来た道を戻ろうとした。 だが、振り返ってみると後ろには森が広がっていた。 いくら暗かったとはいえ、森を歩いていたら流石に気づく。 いつのまにこんな所に迷い込んだんだ。一体ここは何処なんだ? 携帯を開いてみると圏外、俺の頭は完全に混乱状態に陥った。 時刻を見てみると20時を回ったところだった。まだこの時間ならば誰かいるかもしれない。混乱した頭でとにかく助けを求めて叫んだ。 叫びながらも歩き続け5分が立ったところだろうか、後ろから何かの気配を感じて振り返った。 そこには熊・・・だろうか大きさ2メートルほどの4足の獣が目を光らせていた。本能がヤバイ、と告げていた。 間髪置かずに俺は荷物を放り出し、反転して駆け出した。 後ろから獣が追ってくるのが気配でわかった。 いくら走れども背後の気配は一向に消えない。それどころか距離が縮まってくるのを感じる。俺は全速力で走り続けた。 ろくな呼吸もなしに駆け出したので、心臓が悲鳴をあげている。 そもそも俺は何故こんな所にいるんだろうか、あの時新人に責任を取らせれば今もいつもと変わらない日常ではなかっただろうか? そんな考えが頭をよぎりつつも、とにかく俺は逃げ続けた。 駆け出して数分、すでに肺も心臓も限界を迎え、走るスピードも見る見る遅くなっていく。 同時に足がもつれ、前のめりに倒れた。 起き上がろうとするも、目の前には獣が回りこんでいた。 それでも逃げよう、と思い、膝をついたが足が震えてどうも立ち上がれない。 見上げると月夜に照らされた長い爪が振り下ろされようとしているところだった。 おそらく数秒後に来るだろう痛みに向け、俺は反射的に顔を背けた。 バシュッ!という空気を切る音がした後、顔に温かく、生臭い液体がかかったのを感じた。 十秒ほど経っただろうか、まだ痛みは感じない。 何が起こったのか、未だに体を襲わない痛みを不審に思い、俺は恐る恐る目を開けた。 そこには、俺の目の前に立っていた獣が串刺しになり、血を噴出しながら倒れている光景だった。 真紅の槍が突き刺さり、俺を襲おうとした格好のままで絶命していた。 いつのまにか真赤になっていた月が、さっきまで獣だったものを照らしている。 助かったのか、もしそうならば助けてくれた人がいるはずだ。 そう思って槍の柄の方を目で追っていくと必然的に月を見上げる事になった。 そこには月を背負って人影があった。 背丈は少女のものだが、背中には不釣合いな羽。間違いなく異型の存在だった。 だが、月を背負うその姿はとても美しく、貴く、恐ろしかった。 何かこちらに向けて話しかけたのが聞こえたが、その姿を見ての感動と恐怖、先ほどの逃走劇の疲れで俺の意識は途切れた。 目が覚めると、知らない天井だった。 俺は何故こんな所にいるのだろう、と考えていると昨夜の出来事を思い出した。 得体の知れない獣に追われ、その後に何者かに助けられた所で俺の記憶は終わっている。 悪い夢であればいいのだが・・・。とりあえず、今の時間を確認する為に腕時計を見ようとすると、手と腕に昨夜の獣のものであろう赤黒い血の跡がこびりついている。 やはり昨日の出来事は夢ではなかったのだろうか。 それでも信じられなかった俺は、試しに頬をつねってみる。鈍い痛みを感じ、現実であるという事実に引き戻される。 とりあえず現状を把握しようと周囲を確認すると、どうやら建物の一室のようだ。 ぱっと見ただけで調度品は高価な物であるという事がわかり、掃除も行き届いている。 だが、全体的に窓が少なく、配色が赤く、一般的な建築ではない。この館の主の趣向なのだろうか。 念のために携帯を取り出すが、やはり圏外。電池の問題もあるので、俺は電源を切っておく事にした。 それにしてもここは一体どこなのだろうか・・・。 これだけ立派な部屋には電話なりで使用人を呼ぶ手段があるはずだ。 それらしきものがないか確認すると、扉の隣にチャイムが置いてあった。 鳴らすと、独特の高い金属音が扉の外から響いた。 使用人が来るまでの間、窓から外を眺める事にした。 窓からは屋敷の庭と門、その奥には湖が広がっている。屋敷全体が湖に囲まれているのだろうか。 それにしては船着場も橋も無いのにどうやってこの館に入るのか、不思議だった。 考えているうちに、コンコン、とノックする音が聞こえた。 「はい、どうぞ」 答えると「失礼いたします」と、女の声がして、ゆっくりと扉が開いた。 礼儀正しく入ってきたのは、銀色の髪、整った顔立ち、そして奇妙なメイド服を身にまとったメイドとおぼしき女性だった。 10代後半に見えるが、全体から醸し出す雰囲気はもっと大人びている。 「何の御用でしょうか?」 メイドの声で思考をやめ、一番聞きたかった事を口にした。 「一体ここは何処なんですか?」 俺は最初に疑問に思っていることを口にした。 「ここは紅魔館。主のレミリア・スカーレットの館ですわ」 随分と日本語離れしてきた名前が出てきたが、気にせず質問を続ける事にした。 「紅魔館とは?携帯も繋がらないのですが、ここは日本の何処にあたるのでしょうか?」 メイドは少し考え、こう答えた。 「ここは幻想郷、あなたの住んでいた世界とは少し違う世界ですわ」 違う世界とは一体何なのだろうか・・・、どうも話が噛み合っていない気がする。 一先ずこの件はおいて、質問を換えることにした。 「昨夜、獣に襲われていた私を助けてくれたのはあなたですか?」 「いえ、私ではなく主のレミリア様ですわ。ちなみに血まみれだったあなたを運んだのは私」 こんな少女に運ばれるとは・・・、少々恥ずかしかったが、感謝の意を伝えておいた。 「それは有難うございました。あなたの主にも礼を言いたいのですが、あわせて頂けませんか?」 「お嬢様はただ今お休みになっていますので、また起きた時に連絡いたしますわ」 「感謝します。それと、できればお風呂を貸して欲しいのですが」 いい加減この獣の血を洗い流しておきたかった。衛生的にも良くないし、血まみれと言うのは不快だ。 「それでしたら部屋の奥に添えつけのバスルームがありますので、そちらをお使いください」 メイドが指した方向にはバスルームに繋がっていると思われる扉があった。 「それでは、御用がありましたらまたおよび下さい」そう言ってお辞儀をし、メイドは出て行った。 いろいろ腑に落ちない事はあったが、まず風呂に入って落ち着くことにした。 全身についた血を洗い流し、風呂から出た後は添えつけのバスローブを纏ってベッドに寝転んだ。 寝転んでから気づいたが、いつのまにかベッドのシーツも布団も換えられている。 メイドの手際の良さに驚きながらも、思考を巡らせていた。 どうしてこんな所にいるのか、昨夜は一体何があったのか・・・。 だが、いくら考えても結論は出ない。唯一確かなのは、ここは日本ではなく、幻想郷の紅魔館という事だけだった。 物思いに耽っていると、いつのまにか時刻は16時を回っていた。 こんな時間まで休んでいるとは、この家の主はどんな不摂生な生活を送っているのか不思議に思った。 そういえば、着替えはどうしたのものかと気づいた。命の恩人に血まみれの服やバスローブで挨拶など失礼極まりない。 ふと添えつけのタンスの方を見ると、退職する時に持ってきた大き目のカバンが目に入った。 獣にから逃げる時に慌てて放り投げて来たのだが、先ほどのメイドが拾ってくれたのだろうか。 あの中には仕事で使っていた道具と燕尾服が入っているはずだ。奇妙な格好かも知れないが、少なくとも汚れた服よりはマシだろう。 俺はカバンを開け、いつも仕事で着ている服に着替えた。 着替えを済ませ、身嗜みを整えた。鏡にはいつもの仕事着の自分が映っている。 まあ、これなら失礼ではないか・・・。そう思っていると、コンコン、とドアをノックする音が聞こえた。 「お嬢様がお目覚めになりましたので、お客様の準備が整いましたらご案内いたしますわ」とメイドの声が聞こえた。 「はい、すぐ行きます」 俺は答え、扉を開け、初めてこの部屋の外に出た。 出てすぐに気づいたが、廊下も赤かった。そして窓が少ない。やはりこのデザインは館の主の趣向で一貫しているのだろう。 ふとメイドを見ると、少々驚いた表情をして俺を眺めている。流石に血まみれだった男がいきなりこの格好になるのは驚いたのだろう。 数秒後「それでは、ご案内いたしますわ」と、メイドは何事も無かったかのように俺の先導をした。 主の部屋までは長い廊下が続いていた。 途中、格好はメイド風だが羽の生えた人と度々すれ違ったので、あれは何なのかとメイドに聞いてみた。 「うちで働く妖精メイドですわ」と、またしても変な答えが返ってきた。 妖精といえばおとぎ話に出てくるあの妖精だろうか・・・。 それにしても動きが雑なメイド達だった。彼女らが俺の招かれた部屋の掃除等をしていると思うと腑に落ちない。 ここはどうもに理解できないことが多すぎる。 そうこうしているうちに、先ほどから歩くごとに威圧感が増してきているのがわかる。歩くたびに空気がピリピリしている。 どうやら、この威圧感は主の部屋に近づく毎に増してきているようだ。 そして立派な扉の前まで来た。 「ここがレミリア様の部屋ですわ」メイドは威圧感などまるで感じない様子で、扉をノックした。 中から「入りなさい」と少女らしき声が聞こえた。 メイドが扉を開けると、中からは先ほどまで感じていたものとは比べ物にならない程の威圧感が溢れ出して来た。 思わず足が硬直しそうになったが、足元を見て、一歩一歩としっかり踏みしめ、部屋に入った。 ようやく部屋の中ほどまで進むと、後ろで扉の閉まる音が聞こえる。メイドが扉を閉めたのだろう。 足元を見て進んでいくと、高価そうな椅子が行く手を阻んだ。 目線を少しあげると、椅子の先には机があり、机の後ろに威圧感の元凶が鎮座しているのがわかった。 俺は意を決し、それに目を向けた。 そこには、昨夜見た、少女が、真赤な月明かりに、照らされていた。 透き通るような白い肌、ウェーブのかかった青い髪、見られるだけで震え上がるような真紅の瞳、そして背中の不釣合いな羽。 忘れるはずも無い畏怖の存在。俺を襲った獣とは比べ物にならない威圧感があった。 そして月夜を浴びる少女の姿は昨夜にも増し、美しかった。 「こんばんわ、今日も良い月夜ね」 呆然としていると、少女が先に口を開いた。 「は、はい」つい間抜けな返事をしてしまう。 それを聞くと、少女は無邪気に笑って言った。 「ふふっ、別にお前を獲って食おうって訳じゃない。恐れるのはいいけど、それじゃあ会話にならないよ」 俺は昨夜の礼を言うべく、深呼吸をして心臓を落ち着けた。 「さ、昨夜は命を救っていただいただけでなく、安全に寝る場所まで提供して頂きありがとうございました」 と言い、俺は頭を下げた。 「構わないわ、夜の散歩でたまたま私が通りがかっただけだもの。自分の運の良さに感謝しなさい」 こんな所に来た時点で運が良いのかどうかはわからないが、死なずに済んだ自分の悪運に感謝した。 「それよりお前の格好は何?随分と着慣れているみたいだけど。そんな服はあった?咲夜」 少女は俺の着る燕尾服を見て、不思議そうにメイドに尋ねた。 「いえ、私が呼びに言った時にはその格好でした。恐らく、彼のカバンに入っていたものでしょう」 メイドが答えると、少女は面白そうにこちらを眺めた。 「ふーん。そう言えば、まだ名前を聞いていなかったわね。あなたの名前は?」 しまった・・・、感謝のする事に必死でに自己紹介を忘れていた、威圧感にも少し慣れ、ようやく頭が正常に回転してきたのがわかる。 「私は○○と申します。この服装は先日まで働いていた職場のものです」 「私はレミリア・スカーレット。この紅魔館の主をしているわ」 目の前にいる少女がメイドの言っていたレミリア・スカーレットで、この館の支配者だと言う事がわかった。 「そういえば、先日まで働いていたと言ったけど、今は?」 「それは私も興味がありますわ」後ろで聞いていたメイドも口を挟んだ。 俺は仕事を辞めた経緯、そしてこの奇妙な地に迷い込んだ事を簡単に話した。 「またスキマ妖怪の仕業か。それにしても数奇な運命ね」 スキマ妖怪が何のことかはよくわからなかったが、運命、と言う言葉には脳が反応した。 退職し、この辺鄙な所に迷い込み、命を救われ、この館に招かれたのも、運命なのだろうか。 そしてこの少女に出会ったのも運命なのだろうか。 初めて出会って一日やそこらだが、俺はこの少女、いや、レミリア・スカーレットの虜になってしまった。 美しさ、貴さ、そして、恐ろしさの虜に。 「それより、これからはどうするつもり?帰りたいなら、明日にでも咲夜に神社まで送らせるよ」 そう聞かれたが、俺の答えは一つだった。俺はこの方の為に働きたい。 その思いが現実への未練をはるかに凌駕していた。 「もし叶う事なら・・・」 「もし叶う事なら、私をこの館で働かせてください」 うpろだ1121 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「本当に行くのね、○○」 「ああ、長いようで短かったけど、おかげで旅資金が出来たよ、ありがとなレミリア」 「・・見つかると、良いわね。」 「ああ、アテは無いけど、動かないと始まらないしな」 「じゃあ、みんな世話になったな」 「あ、○○・・」 「?どうしたパチュリー」 「これ、持って行って」 「また分厚い本だな」 「長い旅になるかもしれないから、暇つぶし用に貸してあげるわ」 「そうか、あんがとな。じゃあまた返し行かなきゃだな」 「・・ええ、待ってるわ。」 ~月夜の訪問者~ ―5ヶ月後。 「ふぁぁ~あ、眠くなってきたし、そろそろ寝るか・・」 俺はパチュリーに借りた本に栞を挟み、 電気を消そうとしたその時・・ バサッ バサッ バサッ! 「・・・ん、何だ・・?窓からなんかこっち向かって来る・・?」 小さな影がだんだん大きくなったかと思うと、 そのまま窓を突き破ってきた ガシャァァァァーーーン!!! 「んのわああああああああああ!!!」 俺は腰を抜かして間一髪で避けた。(結果的に) 「よっと。つい勢い余っちゃったわ。久しぶりね○○」 窓の事など全く気にもせず、最初に出た台詞はコレである。 紅魔館の主、レミリア・スカーレットだった。 全くこんな時間に一体なんだってんだ、血ならやらんぞ 「お前・・こんな夜中に何しに・・」 「あら、お客様に失礼じゃない、せっかく遊びに来て上げたのに」 窓壊しといて失礼も何もないだろう。 「それはともかくだ、少しは人間の寝る時間というのをだな・・」 「だって昼間だと動きにくいし、まあ実際起きてたから良かったじゃない♪」 「・・いや俺は寝る直前だったわけであって・・ 「あら、結構いい~家じゃない。私には狭いけど。」 ・・わざとらしいスルーである。 「ま、相変わらずでよかったよ、色んな意味で。」 「どういう意味よ?それ。 それより、お客に出すお茶はまだかしら?」 「・・・・」 もうちょっとお客さんらしく出来ないものかね。 コポポポポ 「紅茶でいいか?」 「任せるわ」 「俺は眠みぃから珈琲にしようっと・・」 「まったく夜が愉しい時なのに・・人間というのは人生損しているわねえ。」 酷い言われようだ。 「あら、なかなか美味しいじゃない、この紅茶」 「ああ、これはアリスに貰ったんだ。なかなか良いだろ?」 「いつだったかご馳走になった時、つい『美味い』と言っちまったんだよ。」 「・・・それであんなに棚が紅茶でギッシリ埋まってるのね。・・何となく読めたわ。」 「ああ、嬉しそう~にドッサリ渡されたよ、帰りに。」 というような全くどうでもいい会話をしているが、 本当にわざわざ遊びに来ただけなのか?このお嬢様は。 何か企んでそうな気がしてならないんだが・・ 「そういえばあなたが紅魔館を離れてどれくらいになるんだっけ」 「そうだな、もう5ヶ月位になるんじゃないかな。 てことは俺が此処(幻想郷)に飛ばされてもう半年以上になるのか・・」 「早いものね。みんな会いたがってたわよ、たまには帰ってきなさいよね~」 「はは、そうだな。紅魔館のみんなは元気か?」 「ええ、変わらず騒がしいわ」 「・・でも、紅魔館に活気が出たのも、あなたがうちで働いてからなのよね。」 「そう、なのか」 「そうよ。まったく、あなたにはホント驚かされるわ。パチェもフランも あなたが来る前までは食事の時間に顔すら出さなかったのに。昔と比べて食卓が賑やかよ。」 「そうか、そりゃよかった」 「あなたが去って二人ともまた元に戻らないか心配だったけど、 ・・・ちゃんとあなたの言いつけ守ってるみたいね。全く、どんな催眠術を使ったのよ」 「まあ・・ちょっと説教(?)したら思ったより二人とも素直だったってだけさ。」 妹様の方は命掛けだったが。マジで。 「そういえば、こんな時間にこんな所に居て咲夜が心配してないのか?」 「そりゃ心配してるでしょうね。」 「・・いやいや普通に落ち着いて飲みながら言うなよ。まさか黙って来たのか?」 「勿論。あなたの所って知ったらみんな騒ぎそうだし」 「なんだそりゃ。」 「さっきも言ったけど皆もあなたに会いたがってるからよ」 「パチェは、あなたに貸した本の感想が聞きたいとか何度かボヤいてたし 美鈴なんて『愚痴を親身になって聞いてくれる唯一の仲間が・・』とか酒を呑む度に口にしてるわね。」 アレを親身になってるように見えてたなら周りの普段の扱いが容易に想像できてしまう。 本の方は・・まだ読み終わってないんだよな。なんせ分厚い上に俺は読むのが遅い。 「咲夜は、時折あなたの心配をしてたわよ。弟のように想ってるかもね」 「まあ、咲夜には一番世話してもらったからな。。俺に仕事のイロハを教えてもらったのも咲夜だし」 「ま、とうてい真似は出来なかったケドネ」 「ふふ、気をつけた方がいいよ~?1度咲夜に心配されるようになると 私みたいに自由に動けなったりするかもよ。気も遣わせちゃうしね」 「はは、それは困るな」 「ま、そんな空気で私だけ出し抜いたなんて知られると、後で何言われるやら分かったもんじゃないわ」 「そっか。みんな元気ならよかった。」 少しの沈黙の後、レミリアは聞く 「で、外の世界に戻る目処はついたの?」 ・・正直、これを答えるのが辛かったから自分から言わなかった、 でも聞かれてしまったなら本当の事を言うしかない。 「ああ、ついたよ。」 「・・そ、そうなの」 「境界を操る妖怪に会って、そいつに頼めばいつでも、だそうだ。」 「・・そう、あいつ(紫)に接触したのね」 「やっぱり、知ってたか。」 「・・・。」 「全くみんな人が悪いよ、どういう訳かみんな知らない振りしてるような感じだったんだよな。 ま、自分で探すと決意して、旅をしながら幻想郷を知るいいキッカケになったからいいが、 紫に辿り着くまで冥界に行ったり鬼にも会ったり、なんか振り回された感じで色々大変だった」 「あいつは神出鬼没だからね。会おうと思って会えるような奴じゃないのよ」 「・・それで、いつ?」 「ん?」 「いつ、帰るの?」 さっきからレミリアお嬢様のお顔が怖いです。 「まだだよ、パチュリーにもまだ本返してないし」 「でも、返したらその後帰るんでしょ?」 「・・まあ、そりゃ・・。俺は此処の住人じゃないし、いつかは帰らないといけないだろう」 カチャン という、俺の言葉をさえぎる様にカップを少し力強く机に置いてレミリアが言った。 「・・焦らなくてもいいんじゃない?」 眼が怖い。これ怒ってる・・よな。 俺は怒られてるのか。 「・・俺は妖怪たちと違って寿命が短いんだ、俺には時間に余裕がないんだよ。」 「はぁ、全く・・あなたも相変わらずね・・。」 レミリアが急に立ち上がり、俺の隣に来て座った。 「・・私があなたにまだ帰って欲しくないって言ってるの察しなよ・・」 「・・・悪い。レミリアはそう思ってくれて嬉しいが、他の人は・・」 「不器用ね・・ほんと。」 またしばらく沈黙の後、紅茶を飲み干すレミリア。 「ごちそうさま。」 「・・パチェが貸したその本、本当に旅のお供にっていう意味だけと思ってる?」 「どういう事だ?」 「あなたが紫に会ったとき、何故すぐに帰らなかったかを考えれば分かるはずよ。」 「この本をまだ返してないからだが、、それが一体・・ってまさか」 「・・そうよ、あなたにまだ帰って欲しくないからそんな分厚い本をあなたに貸したのよ。」 「ほんと、こんな回りくどい事するのパチェらしいわね・・」 「・・・」 「あと、周りが紫の事知らない振りしてそうみたいな事さっきあなたが言ってたけど、多分それ本当よ」 「何故そう思うんだ?」 「あなた気に入られやすい性格なのよきっと。」 「いやいや答えになっとらんぞ?」 「・・一生悩んでなさい」 「・・まあ、あなたがそう言うなら止めない。あなたの問題だもの。私がどうこう言う事じゃない」 そう、普通の人はこう言う・・でも私は・・」 「・・?」 「ごめん、私は我儘な吸血鬼なの」 突然ぎゅっとしがみ付いて来た。 ・・なんだこの展開は。 ボソっと何か言ってるみたいだが、よく聞き取れない。 「お願い・・ないで・・」 「・・何?」 「お願い、まだ帰らないで・・」 ・・・つまり我儘なのを開き直ったって事でよろしいのでしょうか。 まったく、カリスマの欠片もないな。 でもこれがレミリア・スカーレットなのだろう。 こういう時のおぜうさまは妹様より子供っぽい。 「いやだからすぐには帰らないってば、『いつか』だよ」 「・・人間の『いつか』は私たちにとっては『明日』と同義なの。 100年なんてあっという間なのよ?私たちにとって」 やれやれ・・ レミリアはさっきから俺にしがみ付いたまま離れない。 「レミリア・・お前そろそろ帰らないと夜が明けちまうぞ?」 「やだ。帰らない。」 ぷくーっと膨れっ面をしながら言った。 まったく、さっきまでの高慢なお嬢様は何処に行ったんやら。 これじゃただの駄々っ子と変わらんぞ。 「・・まいったな」 「分かった分かった、しばらく此処に残るから」 「・・しばらく・・?」 「まだ先だから・・」 「まだ先・・?」 「ああもう、分かった、ずっと居てやるから機嫌直してくれ、な?」 「本当・・?」 「・・ああ、約束する」 もうほんとガキの頃の俺にソックリ。 つか、こんな約束しちまってよかったんだろうか。 現金に笑顔を見せたかと思ったらそのまま寝やがった。 「・・やれやれ。」 レミリアをベッドに移し、布団を掛けてやった。 「ふぁ・・ぁぁ、・・俺が早く眠りにつきたかったのに、 先に寝るたぁ、全くどういうお客さんだよホントに」 ・・って、ベッド1つしか無いんだった。 ・・・・。 ま、いいか。いいよね?いいよな。俺のベッドだし。 じゃ、ちょっと失礼しますよっと。 ・・ちょっと狭いかな。仕方ないか、一人用のベッドだし。 しかし、我儘に屈服したとはいえ、こんな約束してしまって良かったのか・・。 それにしても 「すぅ・・すぅ・・」 こいつの寝顔初めて見たな・・。 こいつがこの時間に寝るって滅多に無いんだろうな。 ・・・。 ああいかんいかん。変な気起こす前に俺も寝よう。 窓の外を見ると、大きな月が眩しいくらいに幻想郷を照らしている。 「月、綺麗だな。永遠亭のあいつらも元気してるかな・・」 永遠亭を出る時も、冥界を出る時も、 みんなにまた帰ってくるって約束したんだったっけか・・。 破っちゃ、駄目だよなぁやっぱ・・。 急に光に包まれた。それと同時に聞いたことがある声が聴こえる・・ 『あなたにはまだ色々やるべき事がいっぱい残ってるわ。』 「やるべき事・・?」 『それは自分で考えなさい。』 「・・・・。」 『でも、ヒントをあげるわ。』 「・・なんだ?」 『幻想郷を・・もっと深く知る事・・よ。』 「今のがヒントか?っておい、待てって!」 『ふふ、それじゃあね。』 ・・・・ 「くかー、くかー」 「すぅ・・すぅ・・」 そう、これは夢の中の声。 夢って分かる夢ってのも変な気分だな・・。 答えは自分で探す・・か。分かったよ。 様々な場所で妖怪、人間、宇宙人、幽霊、鬼等に出会い、別れ、 そして様々な地に足を入れた俺ではあるが それでもまだ、俺はこの幻想郷のほんの一部しか知らないんだろう。 もっと知るためにも、やるべき事を見つける為にも、 またみんなに会わなきゃ・・な・・。 ―窓の外、 そこから少し離れた木の上。そこには一人の妖怪が居た。 「(・・ふふ、あなたはまだ此処(幻想郷)に必要なの。 私にとっても、そして幻想郷にとっても、ね。)」 「(それにしても夢に出るのはちょっと卑怯だったかしら・・ま、念は押しとかないとね。)」 ズズズズズ・・・ 安堵の笑みを浮かべながら、その妖怪は空間の裂け目からゆっくりと姿を消した。 ~月夜の訪問者~ 完。 うpろだ1239 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「カリスマ溢れるお嬢様を世に知らしめる!」 「紅魔館の威厳を世に知らしめる!」 昼に生きるもの達は寝静まった丑三つ時。 夜に生きる者の王、レミリア・スカーレットと、自称その下僕である○○の叫びが唐突に、その静寂を破った。 「流石は分かっているじゃない、○○!」 「もちろんです、お嬢様!」 同じような答えに行き着いた二人は親しげに握手を交わす。 レミリアと○○、この二人は非常に気の合う者同士なのである。 そのために○○は、時折彼女のティータイムにお呼ばれをして、紅魔館に足を運んでいるのだ。 ただの人間に、レミリアがここまで気を許すとは、いやはや世の中分からないものである。 「……さて、そうは言っても、どのようにすればいいかしらね」 「任せてください! 俺に考えがあるんです。名付けて、『スカーレットプロジェクト』!」 「……へぇ、私達の輝かしい第一歩に相応しい名前じゃない」 ……ついでにこの二人、破滅的なセンスの持ち主でもある。 主にネーミング的な意味で。 「それで、どのような物なのかしら、その『スカーレットプロジェクト』とやらは」 期待を込めた眼で○○を見つめるレミリア。 「はい、簡単に言ってしまえば、紅魔館改造計画です。この館の全ての格を上げれば、自ずとそこの主であるお嬢様のカリスマは跳ね上がる。そして同時に紅魔館の名前も威厳も上げられるという一挙両得の計画です!」 「素晴らしいわ、○○! 流石は私の見込んだ男」 「光栄に存じます」 「それで、具体的にどのようにするのかしら?」 「はい、まずはお嬢様本人ですが、こちらに関してはなにも問題はありません。 その麗しいお姿と、漂う気品は見るもの全てを虜にしますし、強さに関しては他の追随を許しません」 「ふふん、当然ね」 誇らしげに胸を張るレミリア。 「それからこの館、紅魔館ですが、確かに幻想郷一美しい屋敷と言えますが、お嬢様が住まうには少し役不足です」 「……ふむ」 「夜の王たる貴女が住むからには、そこに在るというだけで、見るものを震え上がらせる恐ろしさと、存在感がなければいけません」 「……成程」 「そこで俺が外の世界の知識を参考に、イメージ図を描いてみたのですが、如何でしょうか?」 ○○が取り出した紙に描かれていた屋敷に目を見開くレミリア。 「これは、……素晴らしいわ○○! まさか貴方にこんな才能もあるなんて」 「お気に召していただけましたか」 「文句なしよ! そうよね、私ともあろうものが、この程度の屋敷で満足していては駄目よね」 「もちろんです! あなたはもっと上に行く御方だ!」 お互いの認識を深め、二人で盛り上がる○○とレミリア。こんな夜中にやかましいことこの上ない。 「……そして、他の住人のことですが、やはりお嬢様の下につくには、少々力不足です。 並み居る強者を従えてこそ、王者の中の王者。 お言葉ですが、皆お嬢様の供としての自覚が足りません」 「それは私もうすうす感じていたわ」 「そこで、単純な手段ではありますが、スペルカードを考えてみました。これらを各々が使いこなせるようになれば、かなりの戦力になること間違いありません!」 「……これはまた、凄まじい物を考えたわね。 これが使えれば、霊夢もスキマも敵ではない。残念ながら、私には勝てそうにないけど」 「この世界でお嬢様に勝てる者など、いるわけがありません」 「しかし、私以外を相手にするのならば十分ね」 「有り難きお言葉」 「早速全員にこのスペルカードを作らせるようにしましょう」 「では、明日からとりかかりましょうか?」 「そうね。さあ、これから忙しくなるわよ。レミリア・スカーレットこそ、幻想郷最強ということを、知らしめてやるわ!」 レミリアと○○は拳を高々と突き上げて、不敵に笑いあった。 美鈴は後ろで聞こえた破砕音に振り向くと、あんぐりと口を開いた。 見えたのは紅魔館の変わり果てた姿。 外観の一部が砕かれたのだろうか、瓦礫が庭にうず高く積まれている。 紅の塗装もあちこちがぼろぼろに剥げ落ち、地の色とまだらになりみすぼらしい。 玄関の扉は、その機能を果たせずに、だらしなく蝶番ひとつでぶら下がっていた。 そしてその扉の目の前には、最近紅魔館に入り浸る人間○○が、満足げに扉を見つめている。 「……ちょ、ちょ、ちょ!? ○○さん!? なにしてるんですか!?」 「紅魔館を、そしてお嬢様の名を幻想郷中に轟かせる記念すべき第一歩だよ」 「はあ!?」 意味を理解できず茫然とする美鈴に、○○は紙切れを渡す。 「丁度良かったよ美鈴。その紙に描かれたスペルカードを今すぐ作ってね。これはお嬢様の命令だから」 「いや、そうでなくて、咲夜さんやお嬢様に怒られますよ!」 「平気平気。これはお嬢様の意思だから」 「訳分かりませんから。……ってちょっと待って、○○さ~ん」 上機嫌で館へと入っていく○○を美鈴は必死に追いかけた。 咲夜は館の惨状に頭を抱えていた。 まるで妹様が暴れまわったかのように、あちこちが破壊されている。 その景観はそう、外の世界にあった、幽霊屋敷その物だ。 何が起こったのか知らないが、このままではお嬢様に叱られてしまう。 何とかしなくてはと思った矢先、紅い砲弾が目の前をかすめ、廊下の角にあった調度品を砕いた。 何事かと振り反るとそこに現れたのは、主であるレミリア。 「……お嬢様!?」 「あら、咲夜。どうしたのそんなに慌てて」 「どうしたもこうしたも、この惨状。一大事です」 「ああ、いいのよいいのよ。これはスカーレットプロジェクトの一環なんだから」 「はあ?」 「だから、スカーレットプロジェクトよ。咲夜にはこのスペルカードを作ってもらうわ。こっちはパチェに渡しといて」 「え、ちょっと、お嬢様。お止めください!」 「○○さ~ん!待って……」 「レミィ、さっきから何の騒ぎ!? 本がめちゃくちゃなん……」 「お姉様! お気に入りのカップが割れちゃったじゃない! どうしてくれ……」 ○○を追いかけて来た美鈴と、この騒ぎの被害を受けたフランとパチュリーが、ロビーに来て絶句する。 「……何コレ?」 「……さあ、私にも分かりかねます」 「わ~い、わたしもまぜて~」 一番最初に立ち直ったフランは、嬉々として破壊活動に加わる 残された三人は目の前の風景に呆然とする他なかった。 「……なんでこんなことになってる訳?」 「……プロジェクトがどうとか。そういえば、パチュリー様にと、お嬢様が」 咲夜が先程レミリアからもらった紙切れをパチュリーにわたす。 「何コレ? ……ええと、『月月火水木金金符、年中むきゅ~。とにかく色んな弾をばらまく』?」 「スペルカードらしいです」 「「「……」」」 果たして、喘息持ちの彼女の体力は考慮されているのだろうか。 「ひょっとしてわたしのもですか? 「なになに『名刺、紅美鈴。紅、美、鈴の形にした米弾をばらまく』?」 「「「……」」」 そこまで彼女の名前は浸透してないのだろうか。 「咲夜も貰ったわけ?」 「はい。『瞬殺、メイドインアサシン』だそうです。時を止めてその間にナイフで相手を一刺し」 「「「……」」」 不可避弾幕禁止というルールがあったはずだが。 「……これらをスペルカードとして作るようにと」 「……で、これはまあ、いいとして、アレはどういうこと?」 無茶な要望に少し苛立ちながらパチュリーが尋ねる。 「……あの、ひょっとしたらこれじゃないですかね?」 美鈴が差し出したのは、館の絵が描かれた紙。 足元に落ちていたらしいそれには、上部にスカーレットプロジェクトと書かれ、描かれた館は妖怪屋敷と呼ばれるような外観。 「……つまり、ここをこんな風にするために、あんな真似をしているのかしら?」 魔導書の一部を駄目にされたパチュリーは、怒り心頭。 いい感じに額に青筋が立っている。 「……ご安心下さい、パチュリー様。いきすぎた主をたしなめるのも、従者の役目」 穏やかな、あまりにも穏やかな声で答える咲夜。 この後の作業を考えれば、あの二人には、言っておかなければならないことがある。 それはもう、たっぷりと、こってりと。 「……妹様、危ないですから降りてきてください」 スペルカードといい、妖怪屋敷(門前で啜り泣く悪霊役)といい、あんまりな扱いを受けた美鈴も、普段とは違う笑顔でフランに呼び掛ける。 暴れ足りなくて不満そうに振り向いたフランは、しかし、三人の殺気に、慌ててロビーに舞い降りる。 「……さて」 美鈴が腰を低く落として構える。 「……二人とも」 パチュリーが、いつも抱えている魔導書を開く。 「……いい加減に」 咲夜が自身の後ろに無数のナイフを展開する。 「「「しなさーーーい!!!」」」 怒りの弾幕一斉掃射。 ただの人間である○○はもちろん、全く気付いて無かったレミリアも、ルナテイック越えのこの弾幕をかわせるわけもなく。 ピピチューン! 「「う~~~~~~!!」」 紅魔館の一部とともに見事なまでに吹っ飛んだ。 紅魔館、原因不明の半壊 昨日未明、霧の湖付近にある屋敷、紅魔館が半壊するという事件が起こった。 住民からの取材協力を得られず、目撃者もいないことから、詳細は不明だが、最近紅魔館に頻繁に出入りしている、とある人間は「これは、お嬢様の輝かしい栄冠の第一歩に過ぎない。幻想郷を紅魔郷と改め、レミリアお嬢様が支配する日は、そう遠くないだろう」と、レミリア・スカーレットの関与を仄めかす発言をしている。 紅霧異変以来、大人しくなったかと思われた紅魔館だが、また何かしら騒ぎを起こすつもりなのだろうか? 少なくとも、博麗の巫女の世話になるようなことは、御免こうむりたいものである。 ーとある日の文々。新聞一面 「なかなか良い受け答えをするじゃない、○○」 新聞を片手にご満悦といった様子で、レミリアは言う。 「ありがとうございます。実はこれも計画の一つでして」 「計画?」 「結果を急いだために失敗した前回を教訓に、新しく計画を打ち出したのです。名付けて『スカーレットストライクバック』」 「ほう……」 果てしなく同レベルの、素晴らしいネーミングに、食い付くレミリア。 「こうして紅魔館の、そしてお嬢様の恐ろしさを世に広めるわけです。事実あのブン屋は、お嬢様を恐れてこんな記事を書いた。 これを他の者が読めば、お嬢様の恐ろしさを思い知ることになる。 そのうちに、すきまや巫女の方から、お嬢様に跪くことになるでしょう」 「……○○、貴方は本当に、なんて冴えているのかしら」 「恐れ入ります」 「人間にしておくのはもったいないわ。わたしの右腕になりなさい」 「……と、いいますと」 「貴方を眷族として、迎え入れてやろうというのよ」 「……お嬢様!」 最高の褒美に歓喜する○○。 「不肖この○○、どこまでも貴女の側でお仕えさせていただきます!」 後に⑨血鬼と呼ばれる夜王の眷族が、幻想郷縁起に掲載される、ほんの少し前の話である。 新ろだ150 ─────────────────────────────────────────────────────────── 暖炉の火がパチパチと音を立てる、紅魔館の大広間。 「クリスマスの予定?」 クリスマスの数日前、夕食に呼ばれて来ていた僕の質問に、レミリアさんは目を丸くした。 何も予定がないなら一緒にどこかへ、と思い、思い切って聞いてみたのだが。 「何を言ってるの、クリスマスは我が家で家族と過ごすものでしょう。 私の場合は、紅魔館で咲夜やパチェと」 がっくりと肩を落とした僕に、レミリアさんは楽しそうに笑いながら言葉を続ける。 「だから○○、貴方もイブからいらっしゃい。私の大切な想い人だもの、家族も同然よ」 「……レミィったら、またずいぶん見せつけてくれるわね」 二人きりでいたいという気持ちよりも、それだけ受け入れてもらえていることの嬉しさが勝った。 「まあ、どこぞの大工の誕生日を祝う義理もないけれどね。季節の祭りとして楽しむには悪くないわ」 不敵に微笑むその顔は、まさしく悪魔だ。 美しく、威厳に満ちた、幼い悪魔。僕は彼女に畏敬の念を感じるとともに、すっかり惹きつけられている。 「ところでお姉さま、今年もサンタさん来てくれるかな?」 フランちゃんがわくわくしてしかたないといった顔でレミリアさんに尋ねる。 「そうね、きっと来てくれるわ。フランはもう手紙は書いたの?」 「うん、お姉さまは?」 ああ、お姉さんしてるなあ。僕はいつごろまでサンタクロースを信じていただろうか。 「ええ、私も書いたわ。咲夜、メイド達には手紙を書かせたかしら?」 「はい、既に回収してありますわ」 「それは何よりね。当主の不手際でサンタさんに来てもらえないメイドがいては紅魔館の沽券に関わるもの。 ……ところで咲夜、私の手紙読んでないでしょうね?」 「読んでませんとも。ちゃんと届けておきますから、ご安心ください」 ……何だか違和感が。 サンタについて話しているレミリアさんの雰囲気は、 フランちゃんに気付かせないように、という感じではない。 それにしては目がきらきらしている。 「○○は人間だから……もうサンタさんが来てくれる歳ではないかしら?」 ふと我に返ったようにこちらを見たレミリアさんが問いかけてくる。 どう答えたものかと思案する僕に、咲夜さんがそっと目配せした。 お茶を濁すような答えしか思い浮かばなかったけれど、慌てて口を開く。 「……そうですね、さすがに僕はもう」 「残念ね。生きた年月だけなら私の方がずっと上なのだけれど」 心から気の毒そうに、レミリアさんが言った。 「サンタクロースって幻想入りしてたんですか」 「そんなわけないでしょう」 一蹴された。まあ、そうだよな。 「……咲夜がここへ来てしばらく経った頃だったかしらね、レミィがサンタについて知ったのは」 帰り際に寄った図書館で、僕は咲夜さんとパチュリーさんに話を聞いていた。 「『私のところには来たことがない』と仰ったお嬢様があんまり悲しそうだったから、 『きっと手紙を出してなかったからですよ、今からでも出してみては』って言ってしまって」 「私もつい『レミィは吸血鬼としてはまだ幼いんだから大丈夫じゃないの?』って」 「私やパチュリー様、美鈴はもうサンタが来ないぐらい大きくなったから、ということで納得していただいたのだけれど」 「メイドさん達の分は用意することになったわけですか」 さっきの会話を思い出し、合いの手を入れる。 「そう。妖精メイド達もなんだかんだで信じてはいるようだから、緘口令を敷く必要はないけど…… お嬢様と妹様と、住み込みのメイド山ほどのプレゼント、毎年眠ったところを見計らって、時間を止めて配っているわ」 「……お疲れ様です」 外の世界にいて、まだ小さかった頃、僕の両親もこんな苦労をしたのだろうか。 「それでね、○○。貴方にはクリスマス特別任務を与えるわ」 パチュリーさんが意を決したように口を開く。 どうも愉快犯的なところがある気もするけれど、 ちゃんとあれこれ動いているあたり、友達思いなのだなと思う。 「特別任務、ですか」 「咲夜の苦労を少しでも軽減するために、それと私からもレミィにプレゼント、かしらね」 「無理に付き添ってくれなくてもいいのよ○○」 「いえ、僕もサンタに会ったことがないので、ここで待ってれば会えるかな、と」 イブの夜。僕はレミリアさんの部屋にいた。 吸血鬼であるレミリアさんにとっては、普段ならこれからが活発に動く時間帯だ。 だがサンタというのは寝ている子のところに夜プレゼントを置いていくものだ、と聞いているらしく、 ふかふかした冬用のパジャマを着たレミリアさんは、既にベッドに入っている。 とはいえ、普段起きている時間になかなか寝付けるものではない。 去年までは眠れるまで咲夜さんが付き添っていたそうだが、それではなかなかプレゼントを配ることができない。 どのみち時間を止めるとはいえ、余裕を持ってプレゼントを配れるように、今年は僕がレミリアさんに付き添うことになったのだ。 「それに……」 「?」 「二人っきりで過ごせるのも、ちょっといいかなと思って」 「……そうね」 後者については本心からの気持ちだ。 寝室に二人でいるからといって、別に何をするわけでもない。 ベッドサイドに腰掛けて、布団の中のレミリアさんと他愛もない話をしながら、レミリアさんが眠れるのを待つだけだ。 ベッドの支柱を見ると、ずいぶん大きな靴下がぶら下げてある。いったい何をお願いしたんだろう。 「じゃあ、私が眠っている間にサンタさんが来たら、よくお礼を言っておいてちょうだい。 フランやメイドたちの分も含めて、毎年苦労をかけていると思うから」 「わかりました、無事会えたら伝えておきます」 咲夜さんに、になるが、後でちゃんと伝えておくことにしよう。 「ねえ○○……」 「なんですか」 そろそろ眠気が差してきたらしく、小さくあくびをしながらレミリアさんが言う。 「今すぐそうなってくれ、というわけではないけれど…… いつか私がサンタさんからプレゼントをもらえないくらいまで大きくなって…… その時も、貴方は私の側にいてくれるかしら?」 その言葉の意味するところをしっかりと理解した上で、肯く。 何しろ五百歳で今の姿なのだ。 ただの人間のままなら、レミリアさんが成長する頃には僕はもうこの世にいないだろう。 「許してもらえるのなら、ずっと、ずっと側にいたいです」 ただの人間をやめてでも。ただの人間として生き、死んでいくことがどんなに尊ばれていても。 「……そう」 レミリアさんは満足そうに笑うと、布団の中から優しく手を差し出した。 「私が眠るまで、手を握っていてくれるかしら」 差し出された手を、両手でそっと包み込む。 目を閉じたレミリアさんは、しばらくして寝息を立て始めた。 ふと我に返る。窓のない部屋なので朝日が差し込んでくるわけではないが、 おそらくは朝だ。どうやら僕も寝てしまったらしい。 レミリアさんはまだ眠っているらしく、静かな寝息が聞こえてくる。 傍らの靴下には結構な大きさのプレゼント箱が入っている。 咲夜さん、いい仕事してますね。 「んー……○○、サンタさんは?」 「……すみません、僕も寝てしまいました」 「そう……残念ね」 「はい、でもプレゼントはちゃんと届いてるみたいですよ」 その言葉を聞いて靴下に目をやったレミリアさんの表情は、ぱっと輝いた。 「開けてみたらどうですか?」 「そうね……ああ、ちゃんと頼んだとおりのものだわ」 「日傘、ですか?」 箱から出てきたのは、日傘だった。普段外出の時に使っているものよりも幾分大きい。 「ええ。昼間に貴方と外に出る時に、少し大きめの日傘があるといいかと思って。 ほら、その……相合傘、とか」 頬を染めてこちらを上目遣いに見るレミリアさんを見て、何だか胸が熱くなるのを感じる。 と、いけない、渡し忘れるところだった。 「あの……これ、僕からです」 小さな箱を取り出す。サンタクロースにはかなわないけれど、せっかくクリスマスなのだから。 「……開けてもいいかしら」 「どうぞ、ささやかなものですが」 笑みを浮かべながら、レミリアさんは箱の中身を取り出した。 「これは……ブローチね」 香霖堂で綺麗な紅い石を見つけたので、つてを頼って細工してもらったブローチ。 価値、とかはわからないけれど、それでも何かプレゼントを贈りたかった。 「ありがとう、大切にするわ。 ……ところで○○、ベッドの下に袋が置いてあるから取り出してくれる?」 「はい、これですね……よいしょ、と」 何か色々と入っているらしいその白い袋はずいぶんと大きく、まるでサンタクロースが背負っているような…… 「咲夜達にはもうサンタさんが来ないから。代わりに当主の私からプレゼントをあげるのよ。 今年は貴方にも手伝ってもらおうと思って」 ベッドから降りたレミリアさんは、ドアの方に向かった。 袋を担いで後に続く。 「咲夜に、パチェと小悪魔に、美鈴に……」 指折り数えていたレミリアさんは、不意に大輪の花のような笑顔で振り向いた。 「○○、ちゃんと貴方の分もあるからね」 「……ありがとうございます」 「さあ、出発しましょう」 幻想郷に来て初めてのクリスマスの朝。 愛しいサンタクロースに付き従い、プレゼントを配りに行くのはなかなか幸せな気持ちだった。 新ろだ232 ─────────────────────────────────────────────────────────── - れみりあといっしょ 或いは『夢見る少女じゃいられない』 ふと。 手に触れた冷たい感触に、少年は目を覚ます。 いつもと同じ暗いばかりの夢から目覚めても、そこはやはり闇。ただ違うのは、窓から差し込む半月の飛沫に包まれた、柔らかい闇だった。 自分の左手があるはずの方向へ、胡乱な意識のまま頭を巡らせる。 飛び込んできたのは、白磁の肌に、蒼白の髪、そして爛と輝く、紅玉の瞳。 「……お嬢様、どうかしたんですか」 視界に結ばれた見知った少女の像に、少年は声をかけた。 少女は──レミリア・スカーレットは何も言わず、彼の手の平を自分の頬に宛がっていた。 レミリアの体温は人のそれより遥かに低く、だが冬の夜気よりは幾許か優しい。 「──夢を」 うっすらと開けた目を夢見るように泳がせながら、レミリアは言う。 「夢を、見たの」 今ここにいるレミリアを、少年は知らない。 少年にとってレミリア・スカーレットという少女は──少女の姿をした吸血鬼は、傲岸不遜で高潔で、しかしどこか子供じみた仕草を見せる、そういう人物だった。 けれども。今の彼女は、孤高なる狼の王というよりも、今すぐにでも霧になって消えてしまいそうに弱々しく見える。 「お前が死ぬ夢だったわ。お前はまるで眠っているかのように死んでいたの。 腐ることも枯れることもなく、ただ真っ白な部屋の中で真っ白なシルクの上に横たわっていた。 そこには私とお前しかいなくて、私はお前に薔薇を捧げた。真っ赤な真っ赤な血の色をした薔薇を捧げた。 けれどもお前ときたら、まるで冬の月のように真っ白な肌をして、目を覚まそうとはしなかった。 とてもおかしな話。そこでは、私とお前は同じ温度をしていたのに、私だけが動いていて、お前は死んでしまっていたの」 歌うようなレミリアに、少年は返す言葉を持たなかった。 それは、夢語りをするレミリアの姿が、彼の知るレミリアからあまりにかけ離れていたからだった。 「お嬢様……」 そう言葉を搾り出しても、続く言葉が出てこない。 何より、どう言葉をかけて良いのかも、まだ幼い彼には分からなかった。 怖い夢を見ることくらい、誰にだってあることだろう。ただそれは、彼の中のレミリア・スカーレットと、どうしても結びつかない。 悪夢ゆえに、こうして夜中に人の部屋を訪れることも。 吸血鬼である彼女が、少年が死ぬことに恐怖するという、それ自体にも。 「どうして、ここに?」 それが少年が出せた問いだった。 少年は、レミリアの『私物』として紅魔館にいる。 記憶も何もかもを喪っていて、湖畔に浮かんでいたところを拾われ、とても珍しい血液型の持ち主として、レミリアの舌を満足させるためにいる。 拾われてから、つい昨日、一年が経った。 その時間の中で彼が知ったレミリア・スカーレットという人物は、少なくとも、人前で弱音を吐くような性格ではなかったと思う。 レミリアもまたそれを自覚しているのか、くすくすと笑った。 「そうね、どうかしているわ。お前程度死んだところで、私の何が変わるというわけでもないのに」 少年は、この幼い吸血鬼のモノだ。その事実は変わらない。 それは両者が正しく認識している。普通の人間なら到底受け入れられる関係ではないが、生憎と少年には何もない。 産んでくれた母親も、十と少しの歳月を過ごした環境もあるはずだが、それらは全て彼の中から喪われた。 だから少年にとって、自分と同じ背丈のこの真白い吸血鬼こそが、世界の中心だった。 一年間生きてきて、色んなことを学び、それでもなお。 ここがまともな人間の住む場所ではないと知って、それでもなお。 どうしてかと言えば、それはきっと──とても簡単な、一つの理由。 「でもね、夢を見て、目覚めて──どうしても、お前の顔を見たくなった。 お前がまだ生きていることを確かめたかった。 ついでに、この喉の渇きを癒そうと思って、ね?」 ツゥと伸ばされた手が、少年の寝巻きのボタンを弾き、首筋を露出させる。 そこには二つの小さな傷痕が残っている。レミリアが少年の血を飲むときに、いつも牙を突き立てる場所だった。 「ああ、でも、どうしたことかしら」 傷痕を、ゆっくりと、優しく──まるで愛でるように、レミリアは愛撫した。 「今はもう、お前の味が、全然美味しそうだとは思えないの」 そう口にする吸血鬼は、笑っていながら泣いていて、喜びながら悔やんでいて、その全てを押し殺すように、表情を歪めた。 何にかは分からないけれど、苦しんでいるのだと、少年は思った。 だからどうにかして、それを取り除いてやりたいと思った。 「うまく、言えないと思いますけど、いいですか?」 「良いわ、言いなさい」 許可を得て、はい、と頷いてから、 「あの、僕は──咲夜さんもですけど──人間だから、きっとそのうち死んじゃうと思うんです」 「……そうね」 「それは仕方のないことで……えーっと、その前に、僕って、死んでもどうでもいい存在ですか?」 「……だったら私はここに来ていないわ」 少し憮然とした表情で、レミリアは応えた。心外だ、と言わんばかりに。 しかしそこまで言ったところで、はたと何かに気づいたように表情を変え、 「ええ、でもそうだということは、そうなんでしょうね。どうでもよくは、ないのよ、もう」 「あ、それはありがとうございます」 「いえいえ」 少年に釣られるようにレミリアまでもが頭を下げてから、 「いやそういうことじゃなくってですね」 「ええ、そういう話ではなかったと思うわ」 仕切り直し。 「えっと。僕は多分、そのうち死にます。 絶対に、ってわけじゃないですけど。死ぬのを、ずっと先にすることだってできると思いますし」 「そうね」 レミリアは吸血鬼だ。人の血を吸い、自らの眷属とすることができる。 そうして生まれた吸血鬼は、既に五百年を生きたレミリアと同様、途方もない長寿を得ることができるだろう。 「……私の眷属になるつもりは、ないの?」 そう、レミリアは口にした。 それを言うことは、彼女が本音を吐き出したのと同義だった。 ヒトである少年を、自らと同じ存在にしてまで生かそうとしているのだから。 咲夜にも以前、同じようなことを言ったことがある。そのときは断られ、レミリアも受け入れた。 それが自分と咲夜の最も正しい関係であると、レミリアが思ったからだ。 でも、今はどうだろう。 「ええ、そうよ、きっと怖いんだわ、私」 レミリアは少年の手を離し、代わりに両手で包み込むように頬に触れた。 「お前がいなくなるのが怖いの。私の時間の五百分の一しかないお前がいなくなるのが、とても怖いのよ。 どうしてだかは分からない。でも今は、眠るのが怖い。またあの夢を見てしまうのが、怖い」 少年は、ただの少年だ。珍しい血液型という以外には、何の変哲もない。 この感情の名を、レミリアは知らない。ただ、とても大切にしたくて、だから、喪われてしまうのが怖い。 「お前は私と同じ時間を生きてくれる? 私の永遠に近い旅路についてきてくれるの?」 声は哀願するようであり、強制するようでもあった。 普段ならば、少年がレミリアの頼みを拒むことはない。彼は彼女の所有物だから。 でも、今は。 「……僕はまだ、人間でいたいです」 真っ直ぐにレミリアの瞳を見つめて、そう返した。レミリアは、まるで最初から分かっていたとばかりに「そう」とだけ答え目を細めた 「でも」 「でも?」 「お嬢様とは、ずっと一緒にいたいです。……今は、それじゃダメですか?」 『まだ』は、『いずれは』と言い換えることもできる。 この一年、少年は一言も館の外に出たいとは言わなかった。ただレミリアの所有物であることを望み続けた。 それは彼が記憶を失くしていたからという事情もあったのだろう。 だが、最も大きな衝動は、彼がここで目覚めてから初めて見た、少女の姿。 横たわった自分を見下ろすレミリア・スカーレットを、『綺麗だ』と思ったから。 単に、鳥の雛の刷り込みのようなものだったのかもしれない。正常な触れ合いで獲得した感情ではなかったかもしれない。 けれども、彼はその理由だけで全てが足りているのだ。 「……そう」 今度は、レミリアは微笑んだ。処女雪のように柔らかな笑顔だった。 「そうね。あなたは人間で、いつか死んでしまう人間で、でもまだ生きている人間だものね。 ええ、そうね──仕方がないから、今はそれで満足してあげるわ」 そう言いながら、レミリアは顔を近づけていく。 血を吸われるときと同じ動作だったので、少年はなすがままそれを受け入れた。 だがいつまで待っても、皮膚を食い破る鋭い痛みはなく──代わりに、そっと唇に何かが触れる。 「…………」 何が起きたか理解できていない彼に、レミリアは悪戯っぽく微笑みかけてから、ベッドから飛び降りた。 「おやすみなさい」 そして返事を待たずに部屋を出て行く。 月光の薄明かりに浮かぶ顔には、心なしか、朱が差しているように少年には見えた。 と、そんなことがあったのが十年前。 「あの頃はまだ、あんな可愛い子供だったのにねぇ」 そう言いながらレミリアは、もう少年ではなくなった彼の肩に頭を寄せた。 時間が経つのは、早い。吸血鬼であるレミリアはそうでもないが、少年はおとなになった。 「ああ、そんなこともありましたね。今と同じような季節でしたか」 月明かりの差す窓辺で、二人は並んで椅子に座っていた。 何をするでもないこの時間を、たまらなく幸福だと、レミリアは思う。 「それで、目処は立ちそうなの?」 「ええまぁ、二、三年内にはなんとかしたいところですね」 「本当かしらね? もう少しパチェをつっついておくべきかな」 彼は現在、パチュリーの教えを受け、少しずつ魔法を学んでいる。 今はまだ『職業:見習い魔法使い』だが、いずれは捨虫の魔法を使って『種族:魔法使い』になるつもりでいた。 「そんなことしなくても、言えばいつでも眷族にしてあげるのにねぇ」 「まぁ、半ば意地みたいなものですけど。やっぱり、お嬢様と一緒にいるなら、自分で努力して並び立ちたいなって」 「別にいいけれどね。でも、本当に早くしてよ? 不老不死になったよぼよぼのおじいちゃんなんて、嫌よ、私」 「……いや、流石にそこまではないと思いますけど」 苦笑し、レミリアを抱き寄せた。 「大丈夫ですよ。パチュリー様も、ちゃんと教えてくれてますし。だから僕が魔法使いになったら、そのときは」 「ええ、そのときは」 手を、重ね合わせる。レミリアの左手薬指には、銀の指輪が光っていた。 鍍金とか錫入りとかそんなことはなく、純銀製だ。 「こんな、つけてるだけで痛いものまで嵌めてあげてるんだから……約束破ったら殺すわよ?」 「破りませんよ。でも結婚したら、もっと大きいのプレゼントしますからね」 「……意外と攻め手なのね、貴方」 言いながら苦笑しつつ、でも、とレミリアは空いている右手で、自分の下腹部をゆっくりと撫でた。 「本当、急いでもらわないと、どっちが先になるか分からないわ」 「滅多にあることじゃないと思うんですけどね……今までだって大丈夫だったんですし」 「どうかしらね? 何となく、そろそろかなぁって思うのだけれど」 「運命の糸が見える人が言うと、洒落にならないですよ、それ」 そうしてまた、二人で笑い合った。 紅魔館が上へ下への大騒ぎになるのは、これよりもうちょっと後の話。 新ろだ239 ───────────────────────────────────────────────────────────